住宅を購入すれば翌年から毎年必要となる固定資産税と都市計画税ですが、≪固定資産税と都市計画税の基礎知識≫ でその概要について、≪住宅購入時における固定資産税等の清算≫ で売買契約時の取り扱いについて説明をしました。
しかし、多くの人にとって気になるのは「それじゃあ実際にいくらかかるの?」という話ではないでしょうか。
そこで今回は、まず固定資産税と都市計画税の課税標準となる評価額のあらましについてまとめたうえで、最後にいくつかの試算をしてみました。
固定資産税評価額の見直しは3年に1回
すべての土地・家屋の価格が3年ごとに見直される
そのため、1958年以降は全件の評価替えが3年ごとに行なわれることになっており、2015年がその基準年度でした。
したがって、2015年に決定された評価額が2016年と2017年にも適用されることになりますが、それ以前に続いた地価の下落などに伴い、市町村長の判断で簡易な方法により土地価格を修正できる特例措置も講じられています。
ただし、新築や増改築などのあった家屋や分筆・合筆のあった土地については、評価替えの基準年度にかかわりなく、その翌年度に新しい価格が決定されます。
評価替えの実施にあたっては、基準年度の前年に総務省(総務大臣)から指定市(都道府県庁所在都市)における基準宅地の価格が提示されます。
この提示価格をもとに都道府県知事によって市町村ごとの基準地価格(最高価格地など)が定められ、個々の宅地価格については市町村長が決定することになります。
なお、宅地以外の地目(田、畑、山林など)における基準価格の地点は、都道府県庁所在都市とはかぎりません。
また、評価替えに伴う固定資産税などの急激な税額負担の増加を防ぐため、実際に適用される土地の課税標準額に対しては負担調整措置がとられており、固定資産税評価額自体が大幅に上昇した場合でも、課税標準額は前年適用価格の1.15倍を上回らないことになっています。
ただし、同じく固定資産税評価額を課税標準とする登録免許税や不動産取得税においてはそのような負担調整措置がないため、地価の変動に伴って登録免許税などの負担が大きく変わることもあるでしょう。
なお、負担調整措置によって本来の負担水準へと到達する前に次の評価替えが行なわれているのが現状であり、評価替えによって土地の評価額が下がっても課税標準額は上昇する(固定資産税などの税額が増える)ようなケースもあります。
ちなみに、土地の固定資産税評価額は公示地価の70%程度の水準とされていますが、1994年度の評価替えにおいてそれまで25%程度の水準だったものが、一気に(前年1月1日時点の価格に対して)70%前後まで引き上げられました。
当時の地価が大幅に下落し続ける中で、 “前年のはじめ” の70%にしたのですから、実勢相場よりも固定資産税評価額のほうが上回る地点が続出して、大きな混乱を招きました。しかし、最近ではあまり評価替えが社会問題化することもないようです。
新しい価格は閲覧できる!
住宅などを取得して納税義務者となる人は、4月1日から4月20日(または自治体ごとに異なる第1期の納期限)まで、評価額が記載された縦覧帳簿を閲覧し、他の人が所有する土地・家屋の評価額と比較することができます。また、納税義務者および借地人・借家人は、自分の資産もしくは借地・借家対象資産の価格などを年間を通じて閲覧することができます。 閲覧方法などについてはそれぞれの市町村(東京23区は都税事務所)の窓口にてご確認ください。
ちなみに、固定資産課税台帳に新しく登録された価格について不服がある場合には、4月1日から一定の期日までに「審査の申出」を受け付ける制度も設けられています。さらに申出後の審査の決定に対しても不服があれば、訴訟を提起することになります。
土地の評価方法のあらまし
土地の価格は前記のとおり、総務省による指定市の基準宅地などの価格提示、都道府県知事による指定市以外の基準地宅地などの価格提示を経た後、次のステップとして市街地については市町村長が「路線価」を定めます。路線価といっても、毎年7月に発表される相続税路線価ではなく、固定資産税評価額を定めるためのものです。
この「固定資産税路線価」をもとに、それぞれの土地の形状や道路条件などによる補正をして、個々の土地における実際の固定資産税評価額が決定されます。
なお、評価の手続きや方法は総務省による「固定資産評価基準」で細かく規定されており、市町村が勝手に行なうわけではありません。また、土地の固定資産税評価額は、公示価格などの70%程度の水準とされています。
家屋の評価方法のあらまし
一定の手順にもとづき家屋の調査と評価が行なわれる
「固定資産評価基準」とは、地方税法の規定にもとづいて、固定資産の評価基準や評価方法、手続きなどについて定めたものです。
家屋の評価額は「適正な時価」と定義されていますが、具体的には一定の基準による「再建築価格」であり、評価対象となる家屋と同等のものを “評価時点において” 新築する場合の建築費とされています。
新築物件の場合でみると、実際の建築費用の5割程度になることも多いでしょう。
新たに建築された家屋や増改築された家屋について、市町村(東京23区は都)の担当者(固定資産評価員または固定資産評価補助員)が実地調査を行ない、その評価調書にもとづいて市町村長が翌年3月31日までに価格などを決定するものとされています。
ただし、工事見積書のように詳細な積算を行なうのではなく、目視で判断する部分、推定で適用を決めざるを得ない部分などもあるようです。
具体的には、たとえば木造家屋の場合なら、屋根、基礎、外壁、柱・壁体、内壁、天井、造作、床、建具、建築設備、仮設工事(工事中に要した費用)、その他工事の項目に分け、それぞれに標準評点数を付していきます。
標準評点数とは、各項目ごとの標準的な工事(標準量)に対する工事原価をもとに算出されたもので、面積を単位とするものや数量を単位とするものがあります。
建築の形式や種別、材料、寸法、施工量などにより評点を求めて、「施工量が多い、普通、少ない」「施工程度が良い、普通、悪い」などの区分による補正や、地域区分による補正(北海道の内壁は1.1倍など)、工事の難易度による補正などを行なって合計評点が算出されます。
この評点は、東京23区の物価水準(基準年度の2年前の1月現在の建築物価水準や労務費)による工事原価費用1円が1点とされており、木造家屋の場合にはその所在地域の物価水準による補正率(1.00、0.95、0.90の3区分)も適用されます。
さらに、設計管理費などによる補正率(木造家屋の場合は1.05)や、経年減点補正率、積雪寒冷補正率(0.95~0.75)、損耗減点補正率なども用いて最終的に価格が決定されるのです。
経年減点補正率は、新築された翌年(課税初年度)のものが0.80、2年度のものが0.75、3年度のものが0.70などとなっていますが、4年度以降は評点数合計の水準によって異なり、木造家屋の場合は最短で15年後、最長で35年後に0.20(残価率)となります。それ以降は経年による減価がありません。
また、評価替えに伴う建築費などの上昇が経年減点による補正を上回る場合(評価替えによる新価格が前年の価格よりも高くなる場合)は、原則として評価替え前の価格に据え置かれます。
なお、家屋の評価における床面積は原則として不動産登記法による床面積の算定方法と同じですが、構造や形状によっては登記上の床面積と異なること(大きな吹き抜けがある場合や、塔屋がある場合など)もあるようです。
区分所有建物の場合には共用部分の持分を加えた床面積になるため、登記上の床面積とは一致しません。ただし、共用部分の持分を合算せず、それぞれ分けて評価額の算出や表示をする自治体もあります。
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