住宅購入の費用・税金/住宅購入費用・予算

住宅購入・取得時の諸費用に関する基礎知識(4ページ目)

住宅を購入したり建てたりするときには、売買代金や請負代金以外にさまざまな諸費用が必要となります。いろいろな場面で想定される諸費用をできるかぎり網羅しましたので、資金計画を立てるときや契約内容を確認するときには、こちらを参考にしてください。(2017年改訂版、初出:2006年8月)

執筆者:平野 雅之


土地を購入して家を建てるときの諸費用

土地を購入して、ハウスメーカーや工務店で家を建てようとするとき、通常の住宅購入とは異なる諸費用も多く発生します。想定外の出費で予算を超えてしまうことも多いので十分に注意しなければなりません。

また、同じ諸費用であっても建築工事請負契約代金の中に含まれる場合と、別途支払いが必要な場合があり、依頼する相手先によって負担するタイミングも異なりますから、請負契約を締結する前に見積書や契約書の内容をしっかりと確認しておくことが大切です。

なお、家を建てるときに必要な諸費用のうち、購入するときと共通するものについては前のページのいずれかに記載していますので、そちらもご確認ください。

□ 古家の解体費用/整地費用

古家付きで土地を購入したときには、当然ながらそれを解体しなければなりませんが、廃棄物処理費用の問題もあり、解体費用は意外と多くかかるものです。

古家の床面積1坪あたり3万円~4万円程度のことが多いようですが、その構造や規模、道路条件(作業車両が入れるかどうか)、機械を使えるかどうか、アスベスト使用による養生が必要かどうか、あるいは地下埋設物の有無などによっても変わってきます。

建物内に大きな家具や家財道具が残っていると、その処分費用が追加発生することもあるので、できるかぎり売主に処分しておいてもらったほうが賢明です。植栽の状況によって費用が増えることもあるでしょう。

また、隣接地の建物の状況によっては、こちらの解体工事(およびその後の新築工事)による影響の有無を調べるための「家屋調査費用」が必要になったり、解体する建物が鉄筋コンクリート造などの場合には相当な騒音を発生させることから、いくらかの迷惑料を近隣に支払わざるを得なくなったりするケースもあります。

金銭の支払いではなく、誠意ある対応で済ませたいところですが……。ただし、突発的な費用が発生したときには解体業者の負担とすることもあるようです。

なお、土地の売買契約時の条件として、売主の費用負担で古家の解体、整地をしたうえで引き渡してもらうことも有効です。実際にどうするのかは話し合い次第ですが、買主の負担とすることで売買価格を調整するケースも多いものです。

※ 参照 ≪建物の解体について知っておきたいポイント

□ 測量費用

購入した土地に明確な測量図がない場合、必ずしもやらなければならないのではありませんが、これを機会に測量をしておくほうがよいでしょう。

この場合、公有地を含めた隣地の立会いを得てそれぞれの承諾印を取得する「確定測量」と、それを省略した「現況測量」があり、実際にどうするのかはケースバイケースです。隣地所有者が立会いはするものの、承諾印の押印を拒絶することもあるでしょう。

土地の面積に応じて費用が決まるほか、測量を依頼する土地家屋調査士や測量士によっても手数料が異なります。

また、隣地の承諾印を得るにあたり、いくらかの「ハンコ代」(決まった相場はありません)が必要になる場合もありますから、媒介をした宅地建物取引業者の担当者とよく打ち合わせをしておくことが欠かせません。

ただし、古家の解体費用の場合と同様に、売主の費用負担によって測量をしたうえで引き渡してもらうこともあります。このとき、測量の結果に基づいて売買代金を精算すれば「実測売買」ですが、そうでなければあくまでも(実測を伴う)「登記簿売買」です。

なお、その土地の測量図がない場合でも、国による国土調査(地籍調査)が終わっている地域であれば、あえて測量をやり直す必要がないこともあります。

□ 地積更正登記費用

実測によって得られた面積と登記記録の面積が異なった場合、その登記面積を修正する(更正登記)義務は、契約で定めた場合は別として売主にあるわけではありません。買主が自主的に修正しようとすれば、その費用(土地家屋調査士報酬)が必要となります。

□ 地盤調査/地質調査/地耐力調査費用

これから新たに住宅を建てようとするとき、地盤に合った適切な基礎工事をするためにも、地盤や地質、地耐力の調査はしっかりと実施してもらうようにするべきです。調査方法やその内容にもよりますが、少なくとも5万円~10万円程度は必要でしょう。

ただし、調査の結果で地盤改良工事が必要だとされれば、新たに数百万円の出費を強いられることもありますから侮れません。

地盤調査などは土地の購入後に買主の負担で実施するケースも多いのですが、土地選びの段階で専門家の手を借りながら既存の資料などを調べたうえ慎重に対処することも大切です。

隣地との間に高低差があって、新たに擁壁を築造しなければならない場合、あるいは既にある擁壁の改修をしなければならない場合などには、数百万円もの費用負担が必要となるケースもあるため、やはり土地選びの段階において最低でも目視によるチェックなどが欠かせません。

また、隣地との敷地境界にあるフェンスやブロック塀が老朽化していて造り直す必要があるときにも、その費用負担を考慮しておくことが必要です。

□ 住宅性能評価書取得費用

ハウスメーカーや工務店が住宅性能評価書を取得しない(請負契約に含まれていない)場合、別途の負担でこれを取得することもあります。

評価書を取得すればその分だけ建物性能が向上するとは必ずしもいえないのですが、将来の中古市場において評価書の有無がニーズを大きく左右するようになる可能性は十分に考えられます。依頼する評価機関によっても異なりますが、10万円~20万円程度の費用が必要です。

□ 設計・監理料

ハウスメーカーや工務店に設計も任せた場合は建築工事請負金額の中に含まれていますが、設計および工事監理を建築家などに依頼した場合は、建築費の10%~15%程度の費用が別途に必要となります。

設計・監理料は工事着工前に一部(基本設計料、実施設計料)を支払い、残り(工事監理費)を中間金、最終金(竣工時)などに分けて払うことが多いようです。

この場合、建築工事請負金額は設計・監理業務を除いた分が安くなりますから、建築家へ支払う分がそっくり割高になるわけではありません。自分が満足できる設計や、適切な工事監理をしてもらうためには、建築家へ依頼をすることも選択肢に入れておくべきでしょう。

□ 建築確認申請費用

設計・監理料の場合と同様に、設計をハウスメーカーなどではなく建築家に依頼したときには、建築確認申請費用(5万円~20万円程度)が別払いとなるケースも多いでしょう。申請先が民間の検査機関ではなく自治体(特定行政庁)だったとしても、建築確認申請のときには所定の手数料が必要です。

□ 建築許認可手数料

敷地の前面が建築基準法による道路ではない場合における、法43条のただし書き規定適用の許可申請をはじめ、敷地の状況によっては建築確認申請前の段階で何らかの許認可や審査を要することも多くあります。

このようなときには数千円~数万円(自治体により異なる)の手数料が必要となり、申請内容によっては十数万円のこともあります。

□ 地鎮祭費用

工事着工前には地鎮祭を執り行ないます。やらなければならないというものではありませんが、これから建てる家で平穏に暮らせることを祈願するためにもぜひ検討したいものです。

4万円~10万円程度の費用がかかるほか、地鎮祭にあわせて近隣への挨拶費用が必要になるケースもあります。

□ 上棟式費用

地鎮祭と同様に、上棟が終わった時点で上棟式(建前:たてまえ)をすることがあります。工事の安全を祈るためだけでなく、近隣とのコミュニケーションを図るうえでもぜひ検討したいものです。6万円~15万円程度の費用がかかります。

□ 電柱移設費

敷地の前に電柱があって建物や車庫を配置するうえで邪魔になるときには、それを移設してもらうことができる場合もあります。

移設が可能かどうか、その費用負担があるかどうかなど、個々のケースで異なりますが、前面が公道の場合には10万円~15万円程度の費用負担を求められることが多いようです。

※ 参照 ≪敷地の前の邪魔な電柱は動かせるの?

□ 歩道の切り下げ工事費用

車庫を造ろうとする位置に歩道があり、その歩道と車道の間に段差があるときには、原則として歩道の切り下げ工事をしなければなりません。

施工部分の幅や舗装の種類、ガードレールやガードフェンスの撤去の有無、道路標識の付替えの有無、電柱移設の有無、街路樹など植栽の有無、側溝工事の有無、付随する歩道の補強工事の程度などによって異なりますが、30~60万円程度の工事費用が必要です。

※ 参照 ≪意外と高い? 歩道の切り下げ工事費用

□ つなぎ融資金利

ハウスメーカーや工務店などに建築工事を依頼したときの支払い条件は、それぞれの相手先または個々の契約によってまちまちで、特定の決まったパターンがありません。

着手金(手付金)のみの支払いで済む場合がある一方で、工事着工前に着手金として請負金額の20~30%、上棟の頃に中間金として同じく請負金額の20~30%の代金(内金)を支払うものとするケースも多く、時期をずらして中間金を2回に分ける場合もあるようです。

仮に請負金額が3,000万円で着手金と中間金(1回)がそれぞれ30%だとすれば、900万円ずつ合計1,800万円の現金を用意しなければなりません。この分を自己資金として持っている場合はともかくとして、手持ちがなければ資金繰りも大変なことになってしまいます。

住宅ローンの一部として、必要な分だけを先に融資してもらえる場合もありますが、そもそも住宅ローンとは住宅が完成してから正式な融資が実行されるものです。

それがうまくいかないときには、住宅ローンが実行されるまでの間をつなぎ融資で乗り切らざるを得ないケースがあるため、その際の金利も考えなくてはなりません。

いずれにしても、建築工事請負契約を締結する前の段階において、ハウスメーカーの担当者などと資金計画を綿密に打ち合わせることが重要です。

土地購入資金を「つなぎ融資」で借りた場合も同様です。

□ 私道掘削承諾料

物件によっては、水道管、ガス管、下水道管などの埋設工事をやり直さなくてはならないときがあります。当然ながら道路面での掘削工事を伴うわけですが、敷地の前面が私道の場合には、工事内容に応じてそれぞれの所有者や共有者から掘削承諾書を取得しなければならないこともあるでしょう。

その際に「承諾料」または「ハンコ代」としていくらかの金銭を支払うケースも多く、権利関係者が多いときにはそれなりに費用がかさみます。

ただし、自らも私道の持分があればそれほど揉めることもなく、費用もあまり高額にならないのが一般的です。もし私道の持分が自分にないと、だいぶ厄介なことにもなりかねません。

なお、敷地の前面が私道の場合で、既にある水道の埋設管に余力がない(新たに引き込み管を接続すると、同じ管を使う近隣などで水圧が下がる可能性がある)ときや、接続に対して関係者の承諾を得られないときなどには、公道面からの水道引き込み管工事をすべてやらなければならないこともあります。

あらかじめそれが分かっていれば建築工事請負金額の中に含まれるでしょうが、後から分かったケースでは追加工事費用が必要となることもあります。公道面からの距離が長いと、上記の承諾料などの総額が大きくなることもあるでしょう。


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page3 ≪その他の諸費用
page4 ≪土地を購入して家を建てるときの諸費用≫


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