住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

必読!住宅ローン控除適用のケーススタディ

住宅ローン控除の解説を読んでみても、一人ひとりのおかれた立場によって、実際にはどうなるのかよく分からない場面も多いでしょう。また、控除が適用される10年の間には、身のまわりでさまざまな変化も起きます。想定されるいくつかのケースをもとに、住宅ローン控除適用の可否や注意すべきポイントなどをまとめました。(2017年改定版、初出:2005年10月)

執筆者:平野 雅之


住宅ローン控除の基本的な内容については ≪住宅ローン控除を改めて確認しておこう!≫ で詳しく解説しています。しかし、個々のケースに当てはめてみると、なかなか分かりにくい部分も多いのではないでしょうか。

また、10年の住宅ローン控除期間中には、どのような変化が起きるかも分かりません。そこで想定されるいくつかのケースを例示し、それぞれの場合における住宅ローン控除適用の可否などについて解説することにしましょう。



妻が夫の連帯保証人となったとき
夫と妻がお互いに連帯債務者となったとき
連帯債務者の妻が仕事を辞めたとき
住宅ローンとは別に住宅取得資金の贈与を受けたとき
オーバーローンを組んだとき
繰上返済によって返済期間の短縮をしたとき
年末に一部繰上返済をしたとき
住宅ローンを借り換えたとき
勤務先の会社が所有していた住宅などを安価に譲り受けたとき
土地を先行取得してから建物を新築したとき
定期借地権による住宅を購入し、保証金を支払ったとき
転勤により本人が住まなくなったとき
いったん住まなくなった住宅に再入居したとき
日本へ帰任する予定で住宅を購入したとき
住宅ローン控除適用中の住宅を増改築したとき
親の家を増改築し、その費用を子が負担したとき
店舗付住宅、事務所併用住宅を取得または増改築したとき
セカンドハウスを購入したとき
住宅ローン控除の適用期間中に年収が3,000万円を超えたとき
住宅ローン控除を受けていた本人が亡くなってしまったとき、災害のとき



妻が夫の連帯保証人となったとき

住宅ローンを借りるときに妻が夫の連帯保証人(その逆も同じ)となった場合、住宅ローン控除の適用を受けられるのは債務者である夫だけです。

妻に共有持分があったり、実際には妻の収入から返済の一部を負担をしていたりする場合でも、連帯保証人の妻は住宅ローン控除の適用を受けることができません。なお、実質的に妻が返済の一部を負担している場合には、贈与税の適用にも注意することが必要です。


夫と妻がお互いに連帯債務者となったとき

共働きの場合などで夫と妻が連帯債務者として住宅ローンを借り、その負担割合に応じて共有名義の登記をした場合には、夫も妻もそれぞれの所得に対して住宅ローン控除の適用を受けることができます。

この場合、住宅ローンの年末残高もそれぞれの持分に応じて按分することになりますが、返済負担の割合と登記した持分割合が異なるときには、住宅ローン控除の対象金額が少なくなるケースもあるので注意が必要です。

また、家屋の持分割合と土地の持分割合が異なるときには、対象金額の計算方法が少し複雑なものになりますから注意しなければなりません。

連帯債務による住宅ローンのとき、金融機関から夫と妻それぞれに対して按分後の金額による年末残高証明書が発行されれば何ら問題はありませんが、実際には夫(または妻)一人だけに対する総額の残高証明書を1通しか発行してくれない場合もあります。

このとき、たとえば夫の確定申告書に年末残高証明書を添付すれば、妻の確定申告書に添付する年末残高証明書が存在しないことになってしまうでしょう。

そのような場合には、妻の確定申告書に年末残高証明書のコピーを添付したうえで、「年末残高証明書の原本は夫の確定申告書に添付した」というメモ書きを添えれば大丈夫です。ただし、その年末残高証明書の摘要欄などに連帯債務であることが明記されていなくてはなりません。

万一、連帯債務であるのにもかかわらず夫(または妻)宛の年末残高証明書だけで、かつ、連帯債務であることの明記がなければ、税務署は「連帯債務であることの証明ができない」として妻(または夫)の住宅ローン控除を受け付けないことになりますから注意が必要です。

ただし、税務署によって対応が異なる場合もありますから、事前に管轄の税務署窓口などで確認してください。

なお、金融機関との都合上で夫と妻の連帯債務にしたものの、実際には夫の単独名義で登記をして、返済も夫が全額負担しているような場合には、年末残高の全額を夫の住宅ローン控除の対象にできます。

ただし、この場合に妻の持分登記があるとその持分に応じて対象額が減額されるうえ、夫が全額支払っていることに対して贈与税が課税されるケースも考えられます。

夫と妻がそれぞれ別名義の住宅ローンを組んだうえで、自己資金分を含めた負担比率に応じて共有持分の登記をしておけば、お互いにすんなりと住宅ローン控除を適用できるのですが、金融機関によっては取り扱ってもらえないため、住宅の購入を決める前にしっかりと相談をすることが欠かせません。


連帯債務者の妻が仕事を辞めたとき

連帯債務で夫も妻もお互いに住宅ローン控除を受けているとき、妻が仕事を辞めて収入がなくなれば、妻には支払うべき所得税そのものがないため、住宅ローン控除の適用はありません。妻が再就職などしなければ、夫が持分に応じた住宅ローン控除を引き続き受けるだけとなります。

このとき、連帯債務だった住宅ローンを借り換えて夫の単独名義にしても、住宅ローン控除の対象となる金額が増えるわけではなく、もともとは妻が負担する予定だった分について、贈与税が課税されることもあるので注意しなければなりません。

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