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いまこそ知っておきたい、倒産の基礎知識(2ページ目)

2008年以降、不動産会社の倒産が続いていますが、倒産といってもその実態はさまざまです。まずは倒産の中身について知ることが大切。契約をした物件の売主会社が倒産したらどうなるのかを含めて解説します。(初出:2008年10月)

執筆者:平野 雅之


「倒産」といえば会社の経営が行き詰まり、債務(借金)の弁済や取引での支払いができなくなった状態ですが、その実態はさまざま。「倒産」というのも法律用語ではありません。実際の手続きのうえでは、「法的整理」(会社更生法、民事再生法、破産、特別清算)と「任意整理」とに分けられます。

「倒産」と一律に考えるのではなく、これらの違いを理解しておくことが欠かせません。


会社更生法とは?

事業を継続しながら会社の整理をすすめる「再建目的型」のもので、株式会社のみが対象。実際には上場企業や大企業に適用されるケースが多いようです。

裁判所に会社更生法の適用を申請すると、「更正手続きの開始決定」がされるのと同時に、裁判所から「管財人」(弁護士の場合が多い)が選任されます。会社の事業は管財人のもとで行なわれることになり、旧経営陣は原則としてすべて退任します。ただし、それまでの経営責任がない取締役はその後の経営に関与することもできます。

他の手続きよりも厳格なため、以前は更正の完了までにかなりの長期間を要しましたが、2003年(平成15年)4月1日施行の改正会社更生法により、手続きの合理化、迅速化が図られました。


民事再生法とは?

会社更生法と同じく「再建目的型」のものですが、経営破たんが確定的になるよりも前の段階で、早期に再建を図ることが目的となっています。そのため、現実に手形の不渡りや支払い不能などの事態が生じていなくても民事再生法の手続き開始を申請することができます。また、株式会社だけでなく、すべての法人、あるいは個人も民事再生法の対象となります。

会社更生法とは違い、(経営責任をとってトップが交代することはあるにせよ)旧経営陣がそのまま残って事業を継続することができるため、2000年(平成12年)4月1日の法施行(それまでの和議法に代わり導入)以降、適用の申請が比較的多いようです。

ただし、裁判所から監督委員が選任される(監督命令)ことも多いほか、経営陣に問題があるとされた場合には管財人が選任されて経営にあたる(管理命令)こともあります。

なお、再生計画が認可されない場合など、民事再生法の申し立てから数か月後に破産となることもありますから注意が必要です。


破産とは?

会社を消滅させる「清算目的型」の強制執行手続きで、当然ながら会社の事業は停止されます。

破産の申し立てがなされると、裁判所は「破産手続き開始決定」を出し、破産管財人(たいていは弁護士)を選任します。破産管財人は倒産した会社の財産を管理し、そのすべてを売却したり、売掛金があればそれを回収したりして、債権者への配当にあてることになります。

なお、破産にはその会社が自ら申し立てる「自己破産」、その会社の役員が申し立てる「準自己破産」、債権者が申し立てる「第三者破産」の3つがあります。


特別清算とは?

株式会社において「解散登記」がされていることを前提とする手続きですから、それまで通常どおりの事業を行なっていた会社が、ある日突然に「特別清算」となることはありません。

事業の継続を断念したものの、債務が多くて清算がうまくできない場合などに、裁判所の関与によってこれを進めるものです。解散登記によって就任した清算人が整理手続きを行なうことになりますが、財産の売却などは一定の金額以下なら清算人の自由にできるなど、清算人が比較的大きな権限をもっています。


任意整理とは?

民事再生法の申請などをすることもないままに、会社の経営が行き詰ることもあります。銀行との当座取引(手形、小切手)で、6か月以内に2回目の不渡りを出すと「銀行取引停止処分」となって、事実上の「倒産」とみなされるほか、経営者自身が事業の継続を断念する(倒産を認める)こともあるでしょう。

このようなときは上の法的整理(会社更生法、民事再生法、破産、特別清算)と異なり、裁判所の拘束を受けることなく会社の整理が進められます。これが「任意整理」ですが、会社の再建を目指して事業が継続されることもあるようです。



それでは、売買契約を締結して手付金を支払った後、物件の完成・引き渡し前に売主会社が倒産してしまったらいったいどうなるのでしょうか。次のページでみていくことにしましょう。


page1 ≪不動産会社の倒産の動向
page2 ≪倒産の中身の違いは?≫
page3 ≪売主会社が倒産したときには?


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