世界遺産/アメリカの世界遺産

ティカル国立公園/グアテマラ(5ページ目)

サルや野鳥の鳴き声が響き渡るジャングルに突き出した、中米一の高さを誇るピラミッド群。今回は、ジャングルとマヤ文明が融合した、世界有数の複合遺産「ティカル国立公園」へご案内しよう。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ティカルの滅亡と新たなる危機

ジャングルから顔を出すIII号神殿。ロスト・ワールドの神殿から見た景色 ©牧哲雄

ジャングルから顔を出すIII号神殿。ロスト・ワールドの神殿から見た景色 ©牧哲雄

この中央広場以外にも多くの遺跡がある。「ロスト・ワールド=失われた世界」と呼ばれる地区はテオティワカンの影響を色濃く残す地域で、テオティワカンと同じタルー・タブレロ型と呼ばれるピラミッドも見ることができる。ロスト・ワールドのステラには、テオティワカンの王によってティカルの王が殺されたという記述がある。

ロスト・ワールドの隣には7つの神殿広場があり、その東にサウス・アクロポリスとV号神殿がある。ロスト・ワールドの北にはIII号神殿(ジャガー神官神殿)とコウモリの宮殿があり、さらに西にはIV号神殿(双頭の蛇神殿)がある。他にもいくつものコンプレックスや神殿があるので、ジャングル内をのんびり回ってみるといいだろう。

ジャングルと遺跡群

ジャングルと遺跡群

さてこのティカル、900年前後は放棄されたようだが、この時期、ジャングルに繁栄したエズナ、トゥルム、ウシュマル、セイバル、パレンケ、キリグア、コパン、そしてティカル近くにある遺跡ワシャクトゥンと、多くの都市が滅びている。原因はメキシコからの民族移動や気候変動など諸説あるが、なんらかの原因で食糧や水の確保が困難になったようだ。

一説によると、当時のマヤ人はジャングルを焼く焼き畑によって耕地を確保したが、一度焼かれたジャングルは簡単にはもとに戻らず、おかげで広大なジャングルが消失したらしい。これにこの地域の乾燥化が重なって、人々は拠点をジャングルからグアテマラ高地へと移したのだという。現在ティカルのあるペテン州でも、観光客の急増による観光施設や道路開発問題に加えて、焼き畑によるジャングルの消滅が「ふたたび」問題となっている。 
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