老舗出身の新星店
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中国のススキが目を惹く外観 |
千家十職のひとつ、釜師の大西家から北へすっと延びているのが釜座(かまんざ)通。この通りは観光客が押し寄せることもなく、昔ながらの京都の町並みの雰囲気を色濃く残しています。
この静かな釜座通で2007年2月8日に誕生したのが「
日本料理 岩さき」。京都の老舗名旅館で長らく腕を奮ってこられた岩崎さんが、昨年開店されたばかりの新進気鋭の割烹です。店はマンションの1階。大きな鉢に植えられた中国のススキが店の前で風流にたなびいて訪問客を出迎えてくれます。
茶室のような店内
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磨き込まれた美しいL字型のカウンター。 |
店の内扉を入ると、まずは網代天井に塗り壁の茶室のような雰囲気にほっとさせられます。侘び寂びを感じさせるインテリアに、色どりといえば伊賀の花入れにざっくりと活けられた、紅と緑があい混ぜになった紅葉だけ。ほのかな間接照明と相まって、和食をいただくには、まさに洗練の極みと言えるしつらえです。
席数は6名だけのL字のカウンター。奥には5名まで入れる個室がありますが、檜の大まな板の上での、ご主人の包丁さばきを間近で見ることができる手前のカウンターの方が、割烹の醍醐味を味わえます。
器のセンスが素晴らしい
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席に着くと、まずは松の実茶、続いて食前酒が供されます。 |
20年前ほどからコツコツ集められた、染付を中心とした骨董の器たち。土鍋は信楽の中川一辺陶さんの作品。その下に敷かれるのは、今や丹波のお年寄りにしか編めないという藁で編まれた鍋敷き。熱伝動がよいという理由で使われている銅鍋も、そんじょそこらにない波打ったデザイン、という風にお料理以外にも細やかな神経が行き届いているのも、老舗旅館で培われたセンスと本物を見抜く眼力の賜物でしょう。
お料理は凝った飾り付けはありませんが、素材が持つ勢いを活かし切ったシンプルかつ端正なものばかり。献立は昼が3,500円、5,000円。夜は8,000円~となっており、今回は昼5,000円のコースから御紹介。
・先附
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スモークサーモン、無花果、蕪白キクラゲの黄味酢 |
一品目は彩り鮮やかな黄身酢和えからスタート。スモークサーモン、無花果、蕪、胡桃、白キクラゲ、蕪の茎、菊花(黄と紫)が、それぞれの素材の旨味(甘味)を発揮しながらも、一皿の上で上手く調和しています。円やかな酸味の黄身酢も各素材をしっかりと引き立てており、実に巧みな仕上がり。