特筆すべきは極上の出汁
さて、今回は夏の避暑がてら昼の5,000円コースを頂きました。鱧を中心に夏の食材を使った季節感あふれる懐石コースです。明るい日差しの下、庭園を眺めながらの最高のお昼御飯は、京都に生まれて良かったと、心から実感できる内容でした。特に「畑善」は出汁が非常に素晴らしいお店ですので、温かい料理も、冷たい料理も、全てが上質。 |
| 色彩的センスも抜群！ 一流の料理には、高い芸術性が求められるということですね。 |
白ダツとマスカットの絶妙な相性を愉しみながら食べていると、夏の暑さを忘れさせてくれるようです。また、鱧の子を使った養老豆腐は、見るからに手の込んだ一品。この突きだしを食べた時点で、今回のコースも期待を越えるものになると、密かに確信。
◆椀物「鱧と卵豆腐のお吸い物」
私が、今まで食べてきた、この店の椀物の中では「白魚豆腐とわらびと筍のお椀」が、特に印象的でしたが、今回食べた「鱧と卵豆腐のお椀」は、それを超えるものでした。出汁に染み出た鱧のエキスが力強い香りと深い旨味を付与し、言葉にならない世界観を描き出しています。料理というよりも、もはや芸術の域とさえ思えるほど。
◆造り「鱧、鯛の昆布〆、あぶり烏賊、湯葉豆腐、山芋」
 |
| ランチでも、鱧、鯛の昆布〆、あぶり烏賊、湯葉豆腐など、全部で五種盛りを出してくださいます。この器も夏にはピッタリ。 |
今回は夏ということで、鱧尽くしのようなコース内容でした。普通の料亭・割烹で「鱧尽くし」を食べたら、昼でも10,000円以上は取る店が多い中、この店ではランチ5,000円で、様々な鱧料理を堪能させてもらえます。優雅な雰囲気の中で食べさせてもらえる上に、この良心的なお値段。本当に素晴らしいお店です。
それにしても鱧は凄い食材ですね。「造り」でも「椀タネ」でも、「焼き物」にしても美味しいという、まさに日本を代表するスーパーユーティリティな食材です。
◆蒸し物「ぐじ（甘鯛）、粟麩、百合根の生湯葉包み、餡かけ」
 |
| 蒸し物で、ここまで感動させてくれる店は少ないだろう。まっこと至高の味わいである。 |
味には好みがあるとしても、これだけ繊細で完成度の高い「蒸し物」を出せる店が他にあるでしょうか。
何と言っても、この蒸し物の魅力は 「出汁」 の美しい美味しさですが、それ以外にも「生湯葉」で包み込まれた蒸しタネの数々が特筆物。ただでさえ難しい「大地と海の食材の調和」を、「蒸し」という手の込んだ調理法で、理想のバランスに完成させられており、まさに「大地」「海」「人」による一品。お匙ですくって食べるのが、もったいないほどの存在感です。
◆炊き合わせ「鱧、小芋、麩饅頭」
 |
| 愛おしくなるくらい上品な一品。丁寧に作り込まれているのが、見た目だけで伝わってくるようだ。 |
最近の和食シーンでは、八寸が重要視され、炊き合わせは地味な存在として思われがちですが、炊き合わせこそが京料理（和食）の要でもあるのです。出汁・火加減・味付けのバランスなど、総合的な技術力が、炊き合わせでは要求されますからね。
もちろん、「畑善」の炊き合わせは全てにおいて完璧。今回食べた炊き合わせは、海の食材である鱧と、大地の食材である小芋を、極上レベルにまでマリアージュさせて作り込んだ、類い希な料理でした。
◆水物「ミカンゼリー、スイカ」
 |
| 右側のミカンは果実部分がゼリーとなっており、優しい口あたりとなっている。 |
料理長のお得意ゼリーの登場。最後に、この自家製ゼリーを食べるのも愉しみの一つなのです。柑橘類の芳香がする、ぷるるんゼリーが涼感を感じさせてくれます。この時点で「焙じ茶」も供されるのですが、この焙じ茶がまた美味しい！ お茶まで美味しいというのが「畑善」の凄さの一つ。
尚、他にも御料理は出ますが、今回はページの都合で割愛させてもらいました。ランチでも8品ほど出てきますので、本当にお値打ち内容ですよ。
大文字と音楽の夕べ。
 |
| 襖から垣間見える庭園が、何とも優美。 |
また、8月16日の大文字デーでは、15,000円（税サ飲物代込み）でミニコンサート付きの大文字鑑賞食事会が開かれます。鳴滝の音戸山から眺める大文字に、極上の夕食という贅沢な一夜を味わいたい人は、是非どうぞ。
「音戸山山荘 畑善」も掲載されているレストランガイドブック「もう一度食べたい！ あのお店の一皿」＞＞詳細はこちら
＜店データ＞
■音戸山山荘 畑善
所在地：京都府京都市右京区鳴滝音戸山町6-18
TEL：075-462-0109
営業時間：11:30～14:00、17:30～20:00
定休日：火曜日
アクセス：京福電鉄北野線高雄口駅より宇多野病院方面へ徒歩15分
地図：Yahoo!地図
