白州1973は、30年前に白州蒸溜所が開設された年に仕込まれ貯蔵されたホワイトオークカスク30年もの。すでに量は少なくなっており、熟成による原酒の欠減の品質劣化を防ぐため同ロットの樽をヴァッティングしたものだ。
山崎1960はミズナラの樽に詰められ、昨年ボトリングされた42年もの。ミズナラ樽特有の伽羅の香りが力強い。
第二部のオーヘントッシャン31年は3回蒸溜のローランドモルトでありながら31年という、非常に稀な長熟の一品だった。モルティな中にミントとフルーツのようなジューシーさがある。
紹介した4品はどれもレアなものであるが、過去や年月の重なり、意外性といった面でなかなか興味深かった。
さて出席した感想をひとつ言わせてもらう。これは飲み手への苦言だ。
出席者の皆さんは非常に熱心で、ブルーム氏やブレンダーの言葉を漏らさまいと必死だったが、質問を聞いているとどうも自分がないのである。バーテンダーや経営者といった人たちだと思うが、そのままを客や部下たちに伝えるのだろうか。
セミナーの性格上、ひたむきにならざるを得ないだろうが、もっと自分で感じて欲しいと思う。その上で質問するならばいい。
嗜好品である。ちょっと面白い、愉しい、不思議、そこから何を感じ取るかだ。香味の説明を聞いてメモを取り、それを第三者に語るのはただのカタログ人間。つまらない。
ウイスキーは人に対してやさしく、おいしくて、素敵なものなんだから。しかめっ面して通ぶるより、もっと愉しく感じ取ろうよ。
ワインブームがワインを小難しくしてしまったように、マニアックな人間が増えると、愉しさは損なわれる。頭じゃなくて、口で飲んでいい心地になるものなんだって、わかってるよね。
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