舌に残るノスタルジー
誰しも舌に残るノスタルジックな記憶というものがあると思います。子供の頃、両親に連れて行ってもらった店だったりもしますし、高校生の頃部活帰りに行った店かもしれません。その時感動した味やその店での思い出は、何十年経っても色あせずに残っているもの。店の前に立つとそれが「あの時、このメニューをあの人と食べたっけ。今はどうしているんだろう?」とか「小さいことで悩んでいたなあ」などその時の情景や心理状態まで鮮明によみがえってくるのです。
「なつかしい店があるから、一緒に行かない? 今でも東京一のとんかつ屋だと思っている」
フレンチガイドの嶋さんからのお誘いに、西永福の
とん太郎に行ってきました。
職人技を感じる揚げの技
西永福の駅からほど近いところにありました。店に入るとカウンターと小上がりが数席あるだけの、どこの街にも1軒はあるようなとんかつ屋さんです。嶋さんによると今からおよそ20年前、学生時代にここで食事をするのがたまの贅沢だったのだそうな。料理を選びながら思い出話しに花が咲きます。さて、私が選んだのはシンプルな
ロースカツ(1000円)。少し強めに揚げられた衣からは芳しい香りがただよってきます。
ロースの中心は透明な肉汁をたたえ、火の通し具合に職人の技を感じます。まずは、何もつけずに一切れ。濃厚な豚肉の味が口の中で膨らみ、衣の香ばしさがあとをひく味わい。そして忘れてはならないのが脂身の美味しさです。噛み締めると旨味をたっぷり含んだ脂がジワリとにじみ出てきます。これぞロースカツの醍醐味!
さて、
次ページはハンバーグ付き定食のご紹介!