いよいよ夏本番。見た目にも涼しげな和菓子、と言われて、ぱっと頭に浮かぶお店の一つが世田谷代田の「御菓子司 香風」です。きらきら透き通った寒天の中に玉や石、季節の花が浮かぶ錦玉かんや水ようかん、くず桜は見ているだけで涼しさを運んでくれます。タイムスリップしたような錯覚に陥る店構えも素敵です。
「御菓子司 香風」
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「御菓子司 香風」代田本店 |
世田谷代田に本店を、祖師谷大蔵駅前に支店を構える「御菓子司 香風」。遅くとも昭和の始め頃の創業という代田本店は、築約50年の趣ある建物です。
ひいき客の中には俳人の中村汀女(ていじょ)もいたそうで、祖師谷大蔵店内には汀女から贈られた「初蝶や菓子ととのへて人待てば」という句とともに、「自分はここの上用饅頭が好きで、来客にもここのお菓子をすすめる」という意味の言葉の写しが飾られています。私は好きなお菓子を人に薦めるときに幸せを感じるので、汀女の気持ちもよく分かるような気がしました。
季節のお菓子「錦玉かん」
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「涼風」をイメージ
ひょうたん形の錦玉かん
中に煉切の玉 |
夏になると、お菓子にも「涼しさ」を求めてしまいます。暑い季節の香風には寒天で作る「錦玉かん」を使った上生菓子や水ようかん、くず桜などがずらりと並び、見ているだけで涼しくなってきます。金魚鉢や風鈴の音に涼しさを感じるのと同じで、こういった感覚は不思議なものです。
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煉切の「夕顔」の花の
浮かぶ錦玉かん |
写真上はひょうたん形の錦玉かんの中に、色とりどりの煉切の玉を浮かべて「涼風」を表し、写真右は緑の羊羹の上に、煉切の夕顔を浮かべた錦玉かんを重ねています。
溶かした寒天に砂糖などを入れて煮詰める「錦玉かん」は、その透明感とひんやりした口当たりがいかにも夏らしいお菓子。透明感を生かして中に小石や花、魚などの形の煉切を浮かべたものもよく目にします。
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「露草」をイメージ
黒・白あんを包んだ
錦玉かん |
「錦玉かんは甘いので渋いお茶と共に」とのことでしたが、それほど強い甘みは感じず後味も上品。寒天は砂糖を入れずに作るとサクッとした歯触りで、砂糖を入れると弾力が出て舌触りが変わります。香風の錦玉かんにも独特の弾力があり、後味の良さと涼しげな見た目と共にこのお菓子の魅力だと感じます。