古酒を味わう授業

クラスはなごやかな集まりといった雰囲気で始まった。初めて訪れる人もいれば、以前から林氏の授業に出ている人もいる。レコール・デュ・ヴァンの統括副校長である畑久美子(はた・くみこ)さんが林氏の隣に座って司会進行にあたるので、プロ同士の対話によって古酒と林氏をめぐる秘密が明らかにされていく仕組みである。

林氏が古酒を1本ずつ抜栓し、銘柄を隠してテイスティング用グラスに注ぎ分ける。皆で味わってそれぞれの意見を聞いたのちに、銘柄を明かして解説する。よく行われるように事前に開栓しないこのやり方なら、コルクを抜いた時点から変化して行く様子を全員が味わえるのでベストという、林氏が長年にわたって試飲会を開いてきた経験に基づく方法である。

息をひそめるように注意深くボトルを傾ける
今回のワインは6種類。白のスパークリングが1種類と、赤が5種類。林氏はボトルをそっと籠に横たえて、澱が舞わないよう瓶を動かさずに注意深くワインを抜栓する。1本の上部から下部で微妙に味わいが異なり底には澱の溜まっているワインを、参加者になるべく公平になるように注ぎ分けるためである。

1. 1976年 コルドン・ルージュ ブリュット (マム)
金色の輝きがあり、泡はかなり細やか。熟したリンゴ、シェリーのような酸化熟成香。きりりと爽やかな酸味、ローストしたナッツのような香ばしさのある味わい。「シャンパーニュは古いヴィンテージを生産者がリリースすることもあるけれど、普通に造って取って置いたもののほうが作為を感じなくておいしい」と林氏。

2. 1985年 シャトー・ペデスクロー
かなり濃い色合いに、茶色味がかった色合い。土や苔、インクや動物、香ばしいオークの香り。味わいはソフトで熟しており、余韻も充分。林氏のコメントは「試験に出てもいいような、野菜系の青っぽさ。可愛い赤で始めるのもいいでしょう。味は比較的シンプルで、すいすい飲めます」

3. 1983年 シャトー・タユフェール
タユフェールの熟成感は外観からも感じられる

レンガや琥珀のような色。淡く土臭い香り。味わいは一転してガッチリ濃く、粉のような感触の渋味、ちょっと厚みのある酸っぱさ、長く苦味の強い余韻。「香りより味が出て、メルローの特徴が出ている。83年は本当にいい年ですね」という林氏の解説があった。