驚くべき風味の対比

続いて後半の3つの赤ワインを、ひとつひとつテイスティングしていく。どれも深い味わいだが、それぞれのワインは性格がかなり違う。

4. 1975年 リシュブール (ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)
美しい、淡く琥珀色がかったオレンジレッド。香りはスモーキーで芳しく、カラメルやトーストの感じも。繊細でスムーズ、マッシュルームのような熟成香、かなり生き生きした酸味。味わい全体として、とても澄んだ印象を受けた。参加者からは紅茶・トリュフ・キノコ・なめし革といった形容も聞かれた。

5. 1973年 ボージョレ (モーリス・グラニエ)
とろみがある、琥珀色っぽい赤。ハチミツやストロベリージャムのような甘い香り、ナッツの香ばしさ。4よりソフトで、酸化熟成からカラメルソースのような酸味、バターのようなふくよかさがある。「タルトタタンの焦げたところの風味」という意見が出されたのには同感。林氏は「73年はいい年だけど、評価されていないから選んでみました」という。
 
6. 1964年 ヴォーヌ・ロマネ 1級畑レ・マルコンソール (クロ・フランタン)
レンガ色を帯びたやや淡い色合い。チーズなど動物的な熟成香があり、味わいは香ばしくまだ若々しさのある風味と酸味、コクがありパワフル。林氏のコメントは「舌の奥に苦味を感じるような焦げた感じは、樽から来ている部分もある。石灰分の多い土壌のマルコンソールの特徴が出ていて、梅干っぽく味が締まっていておいしい」

左から順に1~6番のワインのボトル。ガラスやラベルの色合いもそのワインを語る

すべてのワインを試飲し終わって、林氏は「いちばん飲んで欲しかったDRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)のリシュブールを中心に今回のワインを組みました」と明かした。穏やかに参加者の感想に耳を傾ける林氏は、どのワインも同じように、慈しむように味わってから、そのワインについて自分の経験など貴重な話を聞かせてくれる。

一般的に早飲みワインとされている、ごく普通のボジョレの地区名が大書されたラベルのワイン。これを収穫年後35年も経ってから飲むのは、ワインの専門家でも滅多にない機会だろう。林氏は長年の経験で「これならいい熟成をしているだろう」というボトルを見分け、ブルゴーニュでも最高レベルのリシュブールと並べて充分に楽しませてくれる。しかもその後には40年以上瓶熟成したワインが、まだ引き締まったアロマを保っているのを見せる。まさにワインの目利きならではの選択眼である。

この林秀樹氏、いったいどのような人生を歩んで来た人物なのだろうか?