中国茶/中国茶関連情報

お茶の香のメカニズム(3ページ目)

お茶の香りははどんな成分によって発するのでしょうか?そしてそれはどのように生成されるのでしょうか?そんなメカニズムを探ってみました。

執筆者:平田 公一

種類別の香りの特徴

お茶の品種や製茶工程により、その香りは様々に変化していきます。それぞれのお茶について、製茶で発生する香りのメカニズム

■ 中国緑茶の香り



龍井茶はナッツのような香ばしい香り


中国緑茶の多くは、摘んだ茶葉を攤放(たんほう)と呼ばれる、一旦放置する工程を経て、釜で炒って殺青(さっせい:酸化発酵を止める工程)します。特に香りのよい杭州の名茶「龍井茶」は、この工程の中で、わずかながら茶葉の酸化発酵が働くことになります。これは日本茶でも行われる場合がありますが、龍井は特にこの工程を大切にします。

この工程のため、香りの成分が、前の段階の化合物質から遊離されることになります。そのため、日本茶に多く見られる蒸製緑茶よりも香りが良いといわれます。さらに蒸す皇帝よりも比較的低い温度で長時間加熱されることになるため、香りの成分が分解されず、またあらたに生成されることになります。

日本茶と中国緑茶を比較すると、日本茶には、樹液のような濃厚な香りのするネロリドールや木質系の香りのするインドールが多く含まれていることが分かっています。また、龍井茶よりも、若干ですが、ジャスミンの香りのするシス-ジャスモンやメチルジャスモネートが多いといわれています。

一方中国緑茶の場合は、日本茶に比べ多くの香気成分が検出されています。さらに、すずらん系の香りのリロナールやバラ系の香りのする、ゲラニオールなどの成分が多くふくまれ、さらに、香ばしい加熱香気であるピロールがかなり多いことが分かっています。そのため、龍井などは、ナッツのような独特の香りを発することになるわけです。

■ 青茶の香り



爽やかな蘭の香りがする台湾茶


一方、中国茶では香りのお茶として代表的な青茶には、香りのよい成分が多く含まれています。これも、緑茶でみた酸化発酵による香りの生成と同様に、萎凋や酸化発酵の度合いで、生成される香りも変わってきます。

台湾の文山包種茶のように萎凋の弱い青茶は、ジャスミンやバラのような花香に若葉の香りが程よく調和しているといわれます。特に、優しく心地よい香りとされるネロリドールが圧倒的に多く、日本茶には含まれていないジャスミンラクトンやジャスモン酸メチルが多いため、香りが良く立つのだそうです。 さらにすずらん系の香りであるリロナールが多く、また木質の香りのインドールも緑茶に比べ多いといわれます。

これらの緑茶に少ない、あるいは含まれない香りが発生するのは、日光萎凋や茶葉を攪拌し茶葉の表面に傷をつけ発酵を促進する揺青の工程で、茶葉にストレスを与え、酸化発酵させることで、酵素活性が促され、加水分解酵素が香気の材料となる物質(香気配糖体と呼ばれます)と出会い、香りが生成されます。

この反応は、茶葉が自らを防衛しようとして働く「防衛メカニズム」によるもので、香りのよいお茶を作ろうとする努力から青茶がうまれたのだとしたら、科学的に非常に理にかなった製造方法が採用されたといえるのだそうです。青茶の香りの良さの秘密は、この製茶工程にあったわけですね。

青茶の種類の中でも安渓の名茶「黄金桂」はジャスミンラクトンの香りが強く、安渓鉄観音は、さらに木質系と花香が渾然と調和しており、武夷水仙は、これらに樹脂系の香りが加わっているといわれます。

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