■ 紅茶の香り



全発酵で香りが生成される四川紅茶


中国紅茶のみならず、世界の紅茶には、花のような香り、若草の香り、そしてダージリンに代表されるような「マステカル」香など、さまざまな香りが含まれています。これらの香りも、酸化発酵を青茶以上に進めたために、香気成分がさらに変化し生成されていきます。

特に紅茶の場合は、萎凋によってアルコール類が増加し、乾燥工程で青茶に残る成分の多くが失われますが、一方で糖、アミノ酸から生成される加熱香気成分やヨノン系化合物、ラクトンなど、様々な香気成分が新たに生成され、これら加わり、青茶にない複雑な香りが出来上がるのです。

スリランカ紅茶(アッサム種)は、先に記載したようにリナロールが多いため、爽やかな花の香りを放ち、一方でダージリン、キーマンの中国種はゲラニオールが多いため、バラのような甘いかぐわしい花の香りがします。

■ 黒茶の香り



土臭いプーアル茶


緑茶、青茶、紅茶とはまた違った製茶工程を経る黒茶の香りは、製品によってかなり異なりますが、一般的に入手しやすいプーアル茶の熟茶は、「渥堆(あつたい)」と呼ばれる工程を経るため、カビ臭、あるいは土のような香りがし、さらに、やや煙のようなフェノール系の臭いを含んでいます。生茶の一部で感じられる緑茶や紅茶のような爽やかな青香や花香は、熟茶の場合はほとんど感じられず、ウッディーな香りがベースになっています。

このように黒茶に古臭、カビ臭がするのは、黒茶に含まれる香気成分にα-テルピネオール、種々のアルデヒド類、ケトン類が多く含まれていることが原因であると言われています。さらに、緑茶や紅茶には含まれていないメトキシフェノール類が含まれており、これは渥堆の工程で行われる微生物発酵によって生成されるものであるといわれています。

また、古茶臭の元である(E,Z)-2、4-ヘプタジエナールなどの不飽和アルデヒド類や1-ペンテン-3-オールなどのアルコール類が花香のするリナロールやネロールなどと混じり、黒茶独特の「陳香」をかもし出すのだといわれています。

このように、それぞれのお茶にそれぞれの香りが生成されるのは、お茶の製造工程の違いが大きく、昔からより香りの良いお茶作りの努力が行われてきたことがわかります。

お茶の劣化には、この香気成分の変化が影響しており、お茶の香りがいかに大切かということがよくわかります。
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