学紫砂茶壺



茶壺の歴史を学ぼう


第二編は、茶壺に関する基礎知識について、四章に分けて解説されています。

第一章は「茶壺」と題して、喫茶法と茶器の変遷や古代から現代にいたる茶具について解説が行われています。また、第二章では「紫砂茶壺の歴史」と題して、茶具の中で特殊な場所に位置する紫砂茶壺そのものの歴史を掲載しています。

そして、第三章では、「喫茶三絶を生んだ宜興」と題して、紫砂茶壺の産地「宜興」の状況や紫砂の土のことについて触れ、第四章「明末清初の文人と紫砂茶壺」と題して、紫砂茶壺の発展の歴史の中で、もっとも重要で黄金期と呼ばれたこの時代にフォーカスし、文人がどのように茶壺を愛してきたのか、その精神について説き起こしています。

付録として、第一編の各種茶壺作成を監修した唐朝霞氏と筆者の往復書簡が掲載されており、唐朝霞氏の茶壺に関する考え方や思いを知る貴重な資料といえるでしょう。

選好茶壺



茶壺の使い方もここで


最終編である第三編「選好茶壺」では、まず第5章として、茶壷を選ぶ前に知っておくべき重要なポイントを、多くの紙面を割いて解説しています。その意味では。茶壺そのものを知るためのメインページがこの章であるともいえるでしょう。

次に第6章で茶壺の上手な買い方のポイントを、そして第7章では茶壺の上手な使い方として、おろし方、手入れ法などが解説されています。

内容を一読すれば、中国茶の茶具である「宜興紫砂茶壺」の基礎を知ることができる本書は、中国茶を飲み初めて久しい方にも、これから中国茶の世界にどっぷり浸っていこうという方々にもお勧めの一冊といえるでしょう。

前編と比較して感じたのは、前作の『極める台湾茶』の際に高山茶と向かい合った時の作者の遊び心がここでは影を潜め、紫砂茶壺に正面から取り組む著者の真摯で深い探求の姿勢が全編を通して感じられたという点でしょうか。多くの文献を捲り、多くの作品と向かいあった作者自身の、茶壺に対する愛情や思いのたけをこめて書かれたこの本は、その意味では、学習の書ともいえるテキストでもありながら、一種の「作品」として仕上がっているようにも感じられました。

茶壺の写真が多いことから、値段は少しばかり高額になってしまっていますが、微妙な茶壺の仕上がり具合を感じることの出来る上質な写真は、この本の心臓部ともいえるパートであり、この価格設定はやむをえない水準であると思われます。

惜しむらくは、唐朝霞率いる「唐人陶藝」の作品しか取り上げていないこと、宜興で活動する様々な作家の方々存在を取り上げていないことでしょう。

茶壺作家によって作られた同じ形状の茶壺でも、実はまったく違った表情に仕上がるものが多いものです。中国茶ガイド平田は、倣古壺ファンで各種作家のものを所有していますが、それぞれ微妙に仕上がりが違い、それぞれに異なった愛情を注いでいます。

ですから、本書に不足している部分については、この本の知識を基礎に、読者がさらに様々な作品に触れて補っていくことで解決していって欲しいと思います。

まずは、素晴らしい大作を仕上げてくださった著者の池上さんの労をねぎらうとともに、広く本書が読まれることを願いたいと思います。

 『宜興茶壺二十三撰 極める紫砂茶壺』


 著者:池上麻由子
 出版:グリーンキャット
 発行:2008年7月7日
 定価:3800円(税別)
 ISBN978-4-9902672-6-1

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