中国茶/中国茶の基礎知識

茶の原産地と分化(3ページ目)

茶の原産地はどこなのか、そしてどのように大葉種や小葉種が分化したのでしょうか?そんな茶の発祥を追って見ました。

執筆者:平田 公一

中国の古茶樹

雲南省西双版納 南糯山の茶樹王
(画像:小野はやお氏)
この茶樹の原産地といわれる地域には、茶の巨木が多く発見されています。

日本の豊茗会会長である松下智先生は、長年にわたりこの一体を調査し、野生の古茶樹の探索を行ってこられた方ですが、先生が中国あるいはその周辺国の林に分け入り、茶樹のルーツと喫茶文化の発祥の地をさぐった記録である『茶の原産地紀行』という本にも、これらの古茶樹についての記述が多く記されています。

現在この地域で見られる茶樹の多くは、高木性の原生茶樹で、陸羽が『茶経』で「一尺、二尺より、数尺にいたるものあり。巴山と峡川(現在の四川省の地域)には、両人合抱するものあれば、伐りて之を採る。」と説明したように、二人で抱えなければならないほど太い巨木です。

すでに枯死してしまいましたが、中国雲南省高県の南糯山に生えていた茶樹は樹齢800年であり、まさに『茶経』の「両人合抱」の表現どおりでした。

雲南省西双版納 古茶樹の茶摘
(『中国茶経』より)
現在でも、四川省から貴州省、雲南省には、今でも1000年以上の樹齢を持つ原生大茶樹が生息しており、中国10県にまたがり200もの古茶樹が発見されているといいます。それだけ、茶樹の原産地としてふさわしい様相を呈しています。

古茶樹の分布は4つの地域に区分され、ひとつは雲南省南、南西地域、二つ目は雲南省、広西自治区、貴州省に接する地域、三つ目が雲南省、四川省、貴州省に隣接した地域、そして最後が広東省、江西省、湖南省に隣接した地域です。

これらの茶樹の集積地を見ると北緯30度線より南にあり、北緯25度に一番多く分布しています。特に、雲南省南部、西南部が最も多く、ついで四川省南部と貴州省で、喬木型の樹高の高い茶樹が典型です。

思茅地区の鎮源県九甲区和平郷で発見された野生茶樹の龍潭第茶樹は、樹高18.5mにも達し、その根の部分の周囲は14mにも達するそうです。

また、有名な巴達山の茶王樹は、南糯山の近くにある海県巴達大黒山に生える茶樹で、1961年発見当時の高さは32.12mにも及んだといわれます。その後暴風雨で茶樹が折れたのですが、今でも23.12mに達します。実はこの茶樹は、Camellia sinensisではなく、その近縁種である、Camellia talliensisih(ツバキが茶に進化する過程の種と考えられています。)の大木であり、ちゃと同じようにこの木の葉を製茶し、茶の変わりに飲んでいたのではないかと考えられています。

さらに、鎭源県は西双版納の北方、雲貴高原の中心となる「哀牢山」(標高3160m)の麓に、鎭源県があり、ここにも樹齢2000年余りといわれる古茶樹が存在しています。木の高さは25.6m、幹の周囲は2.8mで、普段見慣れている茶の木からは想像できないほどの巨木です。

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