中国茶/おすすめの緑茶、黄茶、白茶

太平猴魁と満天香

春らしいお茶といえばやはり緑茶。その中でも特徴のあるおいしく珍しい緑茶があります。どちらも安徽省のお茶。旬の緑茶を楽しんでみてください。

執筆者:平田 公一

4月から5月にかけては、新茶がたくさん出回った時期。そんな時期こそさまざまなお茶を紹介しなければいけないのですが、逆にたくさんのお茶が一気に届く時期でもあるので、試飲したりお茶会したりで忙しく、お勧めのお茶をお届けすることができませんでした。やはり新茶といえば緑茶、その緑茶の中から、今回は安徽省の黄山芳生茶業の茶を扱っている茶房ヒロさんのセレクトされた「太平猴魁(たいへいこうかい)」と「満天香(まんてんこう)」を紹介します。

黄山芳生茶業
黄山芳生茶業の工場前
(写真:茶房ヒロ 目黒さん)

黄山芳生茶業有限公司

茶房ヒロは、花茶を中心に様々な中国茶を販売しているオンラインショップです。この茶房ヒロで扱っている「太平猴魁」と「満天香」は、黄山芳生茶業有限公司のお茶。黄山芳生茶業はあの有名な黄山緑牡丹や錦上添花などを発明した汪芳生氏が率いる茶企業です。汪芳生氏には私も昨年お会いしましたが、非常に温和なおじいさん。工芸茶の作り方を教えていただきましたが、本当にお茶を愛する姿勢には頭が下がるばかりです。

安徽省南部の大谷運郷木嶺後(ダイグユンシャンウォンマンティアン)村にある黄山芳生茶業では、工芸茶のほかにも、このように太平猴魁や満天香など各種の茶を取り扱っています。数年前から、茶房ヒロでは、この黄山芳生茶業と契約を交わし、汪芳生氏の工場で作られたお茶を取り扱っています。

太平猴魁
扁平な太平猴魁の茶葉

太平猴魁

さて、まずは、太平猴魁。太平猴魁は1800年以降に黄山の北西山地、太平県(現在は黄山市黄山区)猴崗、顔家等で作られる銘茶です。先端の一芯三葉から四葉を摘んだ後、さらに一芯二葉に整えられ、製茶されます。普通の中国緑茶とくらべると、その茶葉はとてもプリミティブな形をしています。しかも非常に扁平でかさばっているのが特徴。一度みたら忘れられない緑茶といえるでしょう。

香高く、優しい中国緑茶である太平猴魁は、その勇ましい名前からは想像できないほど、優美で、甘い香りを持つ、美しい女性のような中国緑茶なのです。

産地の猴崗は、黄山市に属するとはいえ、中心部の屯渓から何時間も車で走り、さらに湖を船でたどっていった先にある集落です。実際の茶園はそこから数時間歩いた山奥で、集落から日帰りするのが難しいほどだそうです。そんな山奥の茶園では、穀雨の前から立夏までの間に、昔は柿大葉種という品種で、最近では猴尖7号、8号という品種で太平猴魁が作られます。


太平猴魁
太平猴魁の茶葉は大きいのです。
この太平猴魁は、汪芳生氏のお眼鏡にかなったもの。緑色の綺麗な茶葉、湯をさしたときの香りのよさはすばらしく、「ほのかな蘭の香りがする」とも言われ「猴韵(こういん)」と表現されるようです。また、味わいも淡いながら微妙にスパイシーな味わいがあります。

「太平猴魁」という名前は、茶葉の見た目にそぐわないいかめしい名前のように思われますが、実は、太平県の「崗」で採れる茶であること、さらに「首(かいしゅ=親分という意味)」のように抜きんでて素晴らしいと表現することから名付けられたといわれます。

1915年のパナマ万博で金賞を受賞し有名になったお茶ですが、香りのよさも受賞の理由かもしれません。この香りの秘密は、その製造方法にあります。発酵を抑制するための釜炒りをする前に、萎凋(いちょう)をするからなんです。萎凋とは烏龍茶を作る際に用いられる方法で、発酵を促し、香りを高めるために行われています。

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