(ガイド) 自由な茶藝。素敵ですね。おいしく飲めてこそ、お茶本来の持ち味が発揮できるわけですから。
さて、そんな動機があって、日本でオンラインショップを開設されたわけですが、ネット上にはたくさんのオンラインショップがありますよね。張さんのところは、台湾茶特にまだ日本に紹介されていなかったような各産地のお茶を初めから取扱っていましたから、消費者にとってはとても新鮮でした。日本でのオンラインショップの運営では、いろんな苦労をされたと思いますが、そんな苦労話を聞かせてください。
(張さん) 当時、インターネットの環境はまだまだ不十分で、しかもオンラインショップで買い物をするということがまだ珍しいことでした。そんなときに台湾出身のわたしが台湾茶専門の阿里山茶坊を始めて、しかも訳のわからない名前の烏龍茶ばかり(笑)を販売して、最初はすごく苦労しました。
どうやったら、台湾のお茶のすばらしさをネットで伝えられるのだろうと、いろいろ試行錯誤もしましたよ。たとえば、阿里山茶坊で取り扱う烏龍茶についてできるだけ詳しい説明を画像付でのホームページに掲載するとか、台湾茶産地の紹介をホームページに載せるとか。そんな風にして少しずつお客さんに興味を持っていただけるようになっていきました。
それから、これは経営努力ですが(笑)、阿里山茶坊で表示してある販売価格以外には一切かからない(振込み手数料はお客様負担ですが)サービスを提供したことから、やっと日本のお客様が阿里山茶坊でお茶を買っていただけるようになりました。一度買っていただいたお客様には満足していただけたようで、阿里山茶坊を信頼して下さる方が増えていったのでした。
(ガイド) 阿里山茶坊は、いまや茶器のオンラインショップとしても一番最初に名前が挙がりますが、茶器についての思い入れを聞かせてください。
(張さん) 私は台湾の陶器産地「鶯歌(イングー)」の出身です。鶯歌にはたくさんの茶壷の名人達が住んでおります。せっかくすばらしい作家や作品があるのですから、これを日本に紹介しない手はないと思い、現在故郷の人脈を活用して名人茶壷と鶯歌茶器を阿里山茶坊を通じて日本の友達に紹介しています。台湾茶をもっとおいしく飲んでいただくために、やはり私は台湾茶壷、台湾の名人茶壷が必要だと思っています。
最初は、比較的入手のしやすい価格設定がされている「林国賢(りんこくけん)」さんの茶壷を紹介してきましたが、最近では、台湾茶壷界の第一人者「阿萬師(あまんし)」の梨皮(なしかわ)朱泥茶壷も取り扱うことが出来るようになりました。今では、数十人の名人茶壷を取り扱っております。
常に素敵な茶器を日本の友達に紹介したいとおもっているのですが、阿里山茶坊しかないものを探すのはちょっと難しいことなので、最近、鶯歌の窯と共同で"彩絵茶杯"を開発しました。これからも阿里山茶坊ならの高品質茶器を日本の友達に紹介していきたいなと思います。
(ガイド) 台湾の作家物の魅力は、非常に緻密に出来たその作りと、実際にお茶を頂くときに最適な大きさだろうなと思っています。茶壺は飾りではなくて、実際に使う器であるという認識が台湾の作家さんには根付いているように思いますが、その当たりはどうでしょう?
(張さん) そうですね、台湾茶壷は基本的には実用性を持ったものが非常に多いと思います。見た目がいいだけの茶壷は、なかなか実用性が伴わないものです。きっと、台湾では、日常のものとしてお茶が浸透していることから、茶壺も使うことが前提とされるのでしょう。
直接茶壷作りの名人達に話を聞くと、「そうだよ。いい茶壷は見た目ではなく、実用性だね。」という答えが必ず帰ってきます。阿里山茶坊で扱っている名人茶壷の作家達は、毎日、自作の茶壷で台湾茶を飲むことが生活の一部になっていますから、どういう茶壷ならもっと美味しく淹れられるのか、いつも考えているのですね。そういうことが日課になっている。それが台湾茶壷ならの軽さ、薄さに反映するのです。名人達が台湾茶壷の使いやすさを追求する証とも言えるでしょう。
残念ながら、こうしてインタビューにお応えしても、台湾茶壷の素晴らしさはやはり文章では伝わらないと思います。実際に見て触っていただくのが一番ですよ。