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古代小麦スペルトの知識を深める

シニフィアン シニフィエの志賀勝栄さんが、日本でも注目を集めつつある古代小麦「スペルト」を使い、その特性を解説しながら基本的なパンをつくります。日本パンコーディネーター協会主催セミナーのレポートです。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

スペルト小麦の知識を深めるセミナー

2009年10月14日、日本パンコーディネーター協会は、三幸機械株式会社で、スペルト小麦の知識を深めるセミナーを開催しました。講師はシニフィアン シニフィエの 志賀勝栄さん。スペルト小麦については西尾製粉株式会社の長尾治さんから解説がありました。 当日はパンコーディネーター会員の他、製パン技術者や商品開発担当者40名ほどの参加がありました。

講演の様子スペルト小麦

古代小麦「スペルト」

イタリアではファッロ、ドイツではディンケル、英語圏ではスペルトと呼ばれる古代小麦は、小麦の原種です。国内ではまだ普及していませんが、農薬をあまり使わずに栽培できることや、小麦アレルギーを発症しにくいことから、欧米で愛好者が増えているそうです。

気になる価格は通常の3~4倍と高価ですが、この小麦は皮殻が非常に厚く、手間をかけて脱穀した後の粉は、もとの1/3量になってしまうというから、理解できます。

左手前はエポートル ルヴァンの生地、奥はバゲット エポートルの生地。”エポートル”とは、野生の、という意味。

その粉にはどんな特徴があり、どんなパンをつくることができるのでしょうか。

ということで、志賀さんが検証、実演されたのは、すべてのパンの基本となるようなバゲット、ルヴァン種のパン、ブリオッシュ、クロワッサン、そしてパンドミの計5種類のパンでした。

志賀さんは以前からスペルト小麦のパンを焼いています。参加者からの「なぜでしょう?」との問いに、次のように答えられていました。

「わたしたちは、均一なもの、たとえば虫がついていない、形の揃った食材を普通と思って、慣らされています。アレルギーの人も増えています。そういうことに対し、自分で何かできることはないかと思っていました。ユーハイムにいた頃、お客さんの要望もあって、スペルトのパンを作り始めました。今、シニフィアン シニフィエでも、続けてスペルト小麦のパンをお求めになるお客さんがいらっしゃいます」

スペルト小麦粉の特徴とバゲット エポートル

バゲットの分割生地

最初は「バゲット エポートル」の実演から入りました。

長尾さんによれば、スペルト小麦にはグルテンの形成時間が普通の半分でよく、ダレやすいという特徴があるそうです。志賀さんも、スペルトはデンプンの分解酵素が強い気がする、と言っていました。

スペルト粉80%にスペルトの全粒粉20%。発酵は超微量のインスタントドライイースト(0.03%)で、温度17℃で一晩。仕上がったパンの重みや甘さは、発酵の度合いによって違ってくるので、10℃くらいでもう少し長く発酵させてもよいそうです。ゆるみがはやいので、生地を見てベンチタイムにも気をつけます。

バゲットを成形する志賀勝栄さん
バゲット エポートル

エポートル ルヴァン

「エポートル ルヴァン」は、かえり種と仕上種の二段階法でつくられます。スペルト小麦は熟成が早いために酸味が出やすいのですが、それは二段階法によって調整でき、旨みが引き出されます。焼き上がりの生地を数日、しっとりとおいしく長持ちさせるコツは、本捏ねの際の84~87%の水分量。最初の加水が大切だそうです。

もともとしまりにくいスペルト小麦に全粒粉を50%使うルヴァン種のパンは、ブール型でなくバゲット型にすることで、しっかり生地をしめることができ、多少ダレてもきれいに窯のびするのだそうです。気泡をつくるのが難しいとされるスペルト粉ですが、いつもより細かいながら、美しい気泡を見ることができたのは、やはり職人技でしょうか。

エポートル ルヴァン

バゲットも、ルヴァンのパンも、しっかりとした食感、中身はみずみずしく、ナチュラルな甘さで、体の底からじわっと力が湧いてくるような、なにやら逞しい味わいがしました。スペルト小麦にぴったりのパンだと思います。


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