漢方の未病理論でマラソンレース対策

北京国際マラソンを走った翌日、北京市内の薬局で舌診と脈診を受ける筆者。急性的に糖尿病の症状に近い状態になっていた
北京国際マラソンを走った翌日、北京市内の薬局で舌診と脈診を受ける筆者。急性的に糖尿病の症状に近い状態になっていた
中医学(中国の伝統医学。現在は西洋医学とコラボレーションして発展している)や漢方「未病(みびょう)」という理論的概念があります。未病とは「まだ病にはなっていないが病に至る兆候がある」という状態と説明していいでしょう。

マラソンやジョギングが中医学や漢方となんの関係があるのか、と首をかしげる方もいると思いますが、この未病理論の基本的な概念が分かっていると、マラソンに限らず、すべてスムーズに事が運ぶのです。サブスリーを達成したい、マラソンの記録を伸ばしたい、いつもレースで失敗しているというような方は特に心掛けておいてほしい話です。

「未病」はいわば「亜病気」といっていいような病気の予備状態です。未病のうちに治してしまえば、病気にならずに済むわけです。この未病を治すことを「未病先防(みびょうせんぼう)」とか「治未病(ちみびょう)」といいます。

「早期発見・早期治療」とちょっと違う

がんの治療には「早期発見・早期治療」が大事だとよくいわれますが、「治未病」と病気の「早期発見・早期治療」は似ているようでちょっと違います。

「早期発見・早期治療」はすでに病気になってしまっている状態を早く発見して早く治そうということですから、対象が未病の段階ではなく病気の段階に進んでいます。ただ、がんなどは、病が発生しても痛みなどの症状が出にくく発見が遅れることが多いので、「早期発見・早期治療」が呼びかけられるわけです。

早期のうちに治療すれば治療が簡単で、本人の体への負担も経済的負担も軽くて済みます。生存率も高くなります。例えば大腸がんや胃がんだと、早期のうちなら内視鏡による手術で日帰りも可能ですが、進行すれば開腹手術、さらに転移が起きているという場合もあります。

未病のうちに治すと言うことは、病気の「早期発見・早期治療」よりさらに早期の段階で治してしまうのですから、体へのダメージも経済的負担もさらに減らすことが可能です。

漢方にある未病判定の技術

一般的には病気につながるような未病の症状は、健康診断による数値の変化に顕れることもありますし、漢方に詳しい専門家が診れば舌診(ぜっしん 舌の色や苔、舌の裏側の血管の状態などから体の状態を判断する)でかなりのことがわかります(もちろんすべてのことがわかるわけではありませんが、生活習慣病や体調にかかわることはかなりわかります)。

日本の行く末で心配されていることの一つに医療費の増大が上げられていますが、以上のように未病のうちに治してしまえば病気になる人が減ります。病気の治療費より未病の治療費のほうがずっと少ないので、日本の医療費が少なくて済むはずなのですが、治未病をする人は少ないのが現状です。それは、病気の治療は健康保険の適用になるが、未病(すなわちまだ病気ではない)の治療は健康保険の適用にならないということが歳代の理由ではないかと思います。

病気は医師へ、未病は漢方相談薬局へ

意地悪く言えば、病気になるのを待ってから医師のもとに駆けつけるという、あまり賢くない生き方を私たちはしていることになります。

ただし、さすがに国家の一大事につながりそうな事態に関しては治未病が政策的に行われます。例えば新型インフルエンザの予防接種などはその例だといえるでしょう。インフルエンザにかかっていない健康体でもインフルエンザに備えてワクチンの予防接種を受けるというのは、最大の例といえます。

それではどのように治未病を受けたらよいのか、というともっとも手っ取り早いのが、評判の良い漢方相談薬局・薬店に行くことです。漢方薬はもともと「薬食同源」というような発想に基づいた理論なので、未病は専門分野です。薬局は薬の販売をするところで、客の症状を診断して薬を処方するわけにはいきませんが、漢方相談に積極的な薬剤師は、どのような時にはどの漢方薬がよいのかについてよく研究しています。

要するに薬の研究が進めば症状のことにも詳しくなるわけです。おまけに病気のレベルだと医師のもとにいき、薬局には病気以前のお客さんが多いですから、未病に関して詳しい薬剤師が多いという状況が生まれています。