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ロンドン五輪へ始動―シューズの三村仁司(2ページ目)

日本女子マラソン陣が復活の兆しをみせた今年のロンドンマラソン。そこには「シューズの名工」三村仁司氏の姿もありました。ロンドン五輪に向け、金メダルシューズ作りのスタートです。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

脚長が違って走り込めなかった小崎まり

選手送迎もロンドン名物赤い二階建てバス
選手送迎もロンドン名物赤い二階建てバス
小崎選手が国際大会に登場するのは、2001年世界陸上エドモントン大会10000m。初マラソンは2003年の大阪国際女子で、紹介したように日本女子初マラソン歴代第3位記録となる2時間23分30秒で走り世界陸上パリ大会の補欠に選ばれた。しかしその後足踏みをする。2005年の世界陸上ヘルシンキ大会は正選手で出場し15位。2007年世界陸上大阪大会に連続出場したが14位。夏の大会とはいえ記録も2時間35分04秒。北京五輪代表、世界陸上ベルリン代表の座も逃し、誰もがピークを過ぎたと思っていたところ今年の大阪国際女子で日本人トップの3位(2時間26分27秒)でゴール、復活の兆しを見せた。

「彼女は遅咲きなんですよ。マラソンは長い距離を走り込まなきゃだめだけど、長い距離を練習することができなかったんです。脚の長さが揃ってきてやっと長い距離を走れるようになった。それからまだそんなに時間がたっていないですからね、まだ伸び白がある」と三村氏。

レースは午前9時にスタート。女子エリートの部は、男子エリートや一般の部より45分前にスタートする。日本の女子マラソン大会同様、男子ランナーのリードが受けられない女子のみのレース仕様で、これもロンドンマラソンがこの大会の女子記録の権威を誇示する理由になっている。

しかし、一般ランナーにとって絶え間ない大声援とロンドンの名所巡りをするこのコースの評判が高いのにひきかえ、エリートランナーにとって走路は必ずしも走りやすいとはいえない。その理由の一つが古都ならではの石畳、ヨーロッパ特有の硬い舗装、テレビでもご覧になったと思うがつぎはぎだらけの路面、道幅は広くなったり路地裏のようになったりと千変万化、コーナーも多い。このコースをペースランナーは、2時間20分のゴールタイムペースで引っ張る。

マメができやすいコースだが―

トップ集団の約20km地点通過。小崎選手は後ろから2番目の好位置に付けていた
トップ集団の約20km地点通過。小崎選手は後ろから2番目の好位置に付けていた
「ロンドンマラソンはシューズを作る上で難しいコースですよ」

この日もスタートする頃から小雨が降りだし、小崎選手のシューズを作り続けてきた三村氏もちょっと心配げな表情だ。気候のコンディションはよかったが、路面コンディションは悪い。

「レース用のシューズは、コースの路面、ルートをよく調べて作ります。ヨーロッパの路面は硬いね。ロンドンは石畳もあるし。ロンドンはすでに6回来ておりその点はよくわかってます。それでも今日のように濡れたらスリップしやすいので、もちろん対策はしてますが心配やね。それからロンドンマラソンのコースはコーナーが多いから、マメができやすいです。それも考えます」

三村氏は、中間点手前の折り返してきて残り7km地点にもあたるタワーブリッジ袂近くで声援。小崎選手も期待に応え27、28kmあたりでは優勝したショブホワと肩を並べて先頭に立ち、30km手前までは2時間21分台ペースの先頭グループにぴたりと付いて走った。その後徐々にペースを落としたものの、ラストはペースの落ち込みを食い止め2時間25分43秒、9位でゴールした。

実際に小崎選手の話でも水たまりを除けたり、コーナーのたびに前を走る選手がコーナー側に寄ってくるので、レース中は気が抜けなかったという。しかし、シューズについての心配はまったくなかったとのことだ。赤羽選手は5kmでマメができ、爪が死んだという報道があったが、小崎選手は足には何事もなくフィニッシュできた。翌日はロンドン観光と買い物、それにこれがしたかったというホテルでの「お茶」と疲れを見せない。

「ちょっと力を余してしまいました。もっとタイムを短縮できたですよね」と反省を口にする小崎選手だが、森岡監督は大阪国際女子完走後わずか3ヶ月のインターバルでのレースで、期待以上の走りを見せてくれたことにほっとした表情。いまここで完全に力を出し切るよりも、今年11月から始まる、2011年世界陸上大邱大会代表の座を争うレースへ向けて、良い流れに乗れたことに安心したということだろう。それに「世界」と闘うには何が不足しているのか、何をすればいいのかはっきりと掴めたレースになったはずだ。
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