超スロージョギング……坂道はどうする?
走り方は環境によって臨機応変に。要は、末梢毛細血管を増やすこと、筋肉に刺激を与えること
<目次>
家の回りは坂道ばかり……どのように走れば?
歩く速度で走るといっても、下り坂ならスピードが出てしまうし、上り坂になればとても走れないですよね。コースの取り方も難しい。下りを先にすれば、半分下って帰りは登りばかり、逆にすればはじめから全然走れません。こんな場合は、番組をもう一度思い出してください。超スロージョギングによってさまざまな体の(良い方への)変化が起きることが紹介されていましたが、そのキモとなる核心は、超スロージョギングは筋肉をチキン(遅筋)に変え、末梢毛細血管を発達させることにありました。遅筋が増えるから、運動を持続できるようになり脂肪が燃焼します。末梢毛細血管が発達するから、血液循環がよくなって、血圧、血糖値も改善されます。走り方は環境によって臨機応変に。
着地時のショックが体に刺激を与える
これに続いて、体にショックを与えることによる効果があります。スローで同じスピードとはいっても、ウォーキングとランニングでは着地時のショックが違います。着地時の骨に与えるショックや、着地時に下腿部から胴体に至る筋肉の緊張・収縮が骨を丈夫にしたり、筋肉収縮による血液のポンピング、反応速度が速くなっての転倒の予防能力向上などにつながり、さらには脳の前頭前野部を刺激して性格的にポジティブになるというような効果を得られるわけです。したがって、運動は必ず超スロージョギングでなければならないということはありません。条件は、苦しさが生じない(尿酸値が上がらない)長く続けられ、ある程度筋肉や腱に刺激を与える運動が望ましいということになります。
登ったり、下ったりを繰り返そう
坂道は、下りはショックを与えるのには適当です。しかし、エネルギーの消費量はわずか。登りは走ったりすればすぐにハー、ハーと息が上がります。ところが着地時のショックが得られません。こんな場合におすすめしたいのは、登ったり下ったりを小刻みに繰り返すことをおすすめしました。登りから始めたほうがよいのか、下りから始めるほうがよいのかというと、まずは登りから。登りを走らず歩きます。体が温まってきたら、やや速めに歩きます。ハーハーいってきたら、そこで折り返して下ります。今度はゆっくりと走ります。ショックはあるけれど、呼吸はずっと楽になります。下りはスピードが出すぎないように注意しましょう。
こんな登り下りを繰り返すことで、心肺機能も筋骨格も鍛えられます。ランニングのクロスカントリートレーニングを超ゆっくりやっていると考えてよいと思います。
テレビの番組では、走らずに同様の効果を得られる方法、として踏み台の上がり下がりを紹介していました。ジョギングには及ばないもののウォーキングより効果ありとのことですが、私としては表を歩いたり走ったりした方が精神的にもよいように思うのですが……。
「いまさら始めても……」なんてことはない
番組では、被験者がほぼ毎日30分の超スロージョギングを継続していました。しかし、毎日継続することが困難な方もいると思います。「毎日続けなければ効果はないのか?」という質問もいただきました。結論から言えば、やらないよりやったほうがよい、という一言に尽きます。そして、「私なんかいまさら始めても……」ということはありません。「始めたが吉日」です。
週1、2回では効果をなかなか実感できない
テレビを見てちょっとやる気を起こした、ほぼメタボ一歩手前という59歳の女性から相談を受けました。毎日はやることはできないけど、週末だけやってみようと思うのだが、というのです。ほとんど運動の経験なし、時たま誘われていく3~4時間の里山歩きでも、いつもグループから遅れてしまうという方です。週に1~2回30分超スロージョグでは、なかなか効果を実感できないと思われます。効果が実感できないとたいてい続きません。最初はわずかな運動量でも、効果が実感されると次第にやる気が湧いて、より積極的に取り組むようになるもの。といって超スロージョギングとはいえ、週末にまとめて1週間分の2~3時間は走れないでしょう。もし無理してやれば、筋肉痛を起こしてやはり継続する気がなくなるおそれがあります。
歩きでもいいから始める。ちょっとだけ走りを入れて
そこで、私はとりあえずウォーキングをすすめました。走らなくて可。そのかわり距離は8kmほどで、なるべく腕を振って速く歩くこと。もし、最後まで力が残っているようなら最後の100mだけでも走りなさい、ということで始めてもらいました。やはり、最初の2回ぐらいはとても走るどころではなかったようですが、歩くにしてもタイムが縮まり興味を持ったようです。2回目には200~300mですが走ってもみたようです。3回目には、途切れ途切れでいいのでトータル1kmぐらいは走るようにしてもらいました。これもなんとかクリアできました。4回目から距離を10kmにしたのですが、途中連続で2km走れるようになりました。
そこから毎回1kmずつ走る距離が伸び、直近では5kmちょっと、すなわち半分以上を走ったそうです。
走ったり歩いたりで、10km1時間25分に到達
歩く速さで走ればいいと指示したのですが、走りに慣れると次第にスピードも上がるようになり、所要時間もはじめは8kmを1時間45分ぐらいだったのが、10kmで1時間25分以内に短縮しています。この時間短縮も本人には励みになっているようです。この距離ではまだ目に見えて体重が減少、というわけにはいかないですが、体そのものは変化してきているといってよいでしょう。体の筋骨も心臓の働きも走るという動きに慣れてきているはずです。
平均レベルに達するまでは、焦らずに
たくさんの仲間とわいわい走っていれば、疲れも忘れて距離も伸びる。ベルリンマラソン前日に実施されるモーニングラン |
急に速くなろうとすると、必ず故障がついてまわります。平均レベルに達するまでは、超スロージョギングによってスピードがアップしていく進歩度が、ちょうどいいと思います。
後半にペースアップ走を取り入れる
それでもスピードアップをはかりたいなら、故障の予防、シューズの選択、補強運動などさまざまな取り組みも本格化しなければなりません。「どうしても」ということなら、全力走までいかなくていいですから、いつものジョギングの中で予定コースの半分を過ぎてからペースアップを取り入れてください。時速6kmぐらいで走れる距離を伸ばす
スピードはタイムの10~15%減ぐらいが適当でしょう。もっと速くなりたいという欲が出てくるくらいだと時速7~8kmぐらいになっているでしょうから、これを時速6kmぐらいまでスピードアップして走ります。感覚的には、話し続けられないがどうにか短い言葉が交わせる程度。この速度で走る距離を次第に伸ばしてください。もしこの速度でも最初から最後まで話ができる程度なら、通常のおしゃべりできるジョギングの速度やスピードアップ時の速度も少し上げていきます。速く走るときには細心の注意を
速く走るときの注意は、以前よりも走る前に十分にストレッチングを行い、水分を補給すること。速度が速くなると着地時のショックも大きくなり、筋肉の動きも大きなストレスを伴うことになります。もはや超スロージョギングではないのですから、そのつもりで。毎日継続しなくても、すべてを走らなくても、自分の生活環境やスケジュールに合わせてできることから始める、そして続けることが超スロージョギングの奥義です。まるで超スロージョギングのように。
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