心拍トレーニングとは何?
マラソンで心拍数を確認!心拍トレーニングとは?
トレーニングの強度を測る物差しは、従来、主として主観的な疲労感や筋肉痛によっていました。グッタリするほど激しい練習、筋肉痛が残るほど激しい練習をすれば、高い運動強度のトレーニングをしたと判断するわけです。
しかし近年、特に有酸素系の運動トレーニングの強度を測る物差しとしてLT値(乳酸性作業閾値)という考え方が認められるようになってきました。激しい運動をすれば呼吸は乱れてゼイゼイと肩で息をします。しかし、こうしたレベルのトレーニングは長くは続けられません。乳酸を発生するからです。有酸素運動の場合、運動が長時間続けられなければゴールに行き着けません。必ずしも激しい「運動=効果的なトレーニング」とはならないわけです。
といって、長時間運動を続けるためには運動レベルを落とすとしても、落としすぎると余力を生じすぎて出せる記録も出し切れないことになります。ここを越えるとパフォーマンスに影響を与えるほどの乳酸を発生するという、ギリギリのポイントがLT値というものです。
こうした運動の強度に連動している心臓の働きの変化は、脈拍に素直に現れます。この脈拍の動きを監視していれば、LT値のポイントを判定でき、効率的なトレーニングを可能にするというわけです。
<目次>
ダイエットも心拍トレーニングで効率的に
ダイエットなどを目的とするトレーニングには、効率的に脂肪が燃焼する運動レベルがあります。実施している運動がその運動レベルに適合しているか否かの判断も、脈拍数を指標として観察すれば正確です。心臓病などで激しい運動を禁止されている人のトレーニングにおいても、レベル以上の運動にならないように脈拍数を監視すれば、より安全に運動を実行できます。運動能力を高める目的で、ダイエットや安全のためにも心拍トレーニングは、役立ちます。進化を心拍数でチェック
心拍トレーニングの良さは、効率や安全面だけではありません。運動能力が高まれば、同じ運動をしても心拍数が減少します。運動によって心拍数が減少するということは、活動する筋肉が要求する運動に必要な栄養や酸素を少ない心拍運動で運べるということです。心臓の拍出力が強化されたり、血管が発達して心臓が楽に血液を送り出せたりするようになるためです。以前と同じ心拍数ならより高い記録を発揮できるようになります。このように、自分の運動能力の進化を客観的に判断できるわけです。これはトレーニングを続ける上でモチベーションを高めることにつながるでしょう。もし変化がなければトレーニング内容や生活に問題があると考えることもできます。もし、ある日の心拍数がかえって高くなっていたならば、体が不調なのかもしれません。体調を観察する上でも心拍数の観察は役に立ってくれます。
心拍数を測る方法
お医者さんに行くと、手首で脈を測られることがあります。漢方では脈を測る脈診は重要な医療技術です。脈診では、単に脈拍の早い遅いだけではなく、心臓の強さや働きの滑らかさなど、まるで心電図をとるように脈から体内情報を読み取ります。よくランニングの本に、走り終えたらすぐ後に10秒間測って6倍するというようなことが書かれています。しかし、これでは走っている間の脈の状態はわかりません。走りながらではとても測れるものではありません。そもそも、運動を停止すれば脈拍はどんどん下がるもの、10秒間の間にも脈拍は下がります。手による測定では大雑把な計測しかできません。
血圧計は脈拍も測定してくれますが、持って走るには大きすぎます。ランニングの妨げにならずリアルタイムで脈拍を測定してくれるギアの開発が待たれていましたが、それがハートレートモニターです。
ハートレートモニターも進化
電極付きのベルトを胸にセットし、心臓の拍動によって生じる電流を測定し、トランスミッターでウォッチに送ってリアルタイムで脈拍数を知らせてくれます。ベルトがずり落ちないように、やや締め付け感があるのと、透けて見えるウエアの下に付けていると、ブラジャーでも付けているのではないかと思われるのが気になるのが難ですが、最近は使用者が増えてきたのでそんな気を回す必要もなくなりました。ベルトの素材も進化し、ピタリと肌に密着して締め付けなくてもずり落ちないような製品も登場しています。さらに優れているのが、速度センサーとの連動。速度センサーが走行距離や走行速度を記録してくれるので、ハートレートモニターとコンビを組むと、どのあたりでどのような脈拍なのか、どのくらいの速度で走るとどのくらいの心拍数になるのかを大変細かく記録できるようになりました。その上パソコンへの取り込み機能があれば保存も楽々、グラフ化して視覚的に最大酸素閾値や運動レベルを把握できます。
心拍トレーニングの実際
心拍トレーニングは、目標心拍数を設定することが大切
マラソンでいえば、マラソンに取り組みはじめジョギングの時間を延ばそうというレベル、マラソンをなんとか完走するレベル、自己記録を目指すレベル、競技者のレベルといったところでしょうか。その目標とするところによって心拍数が変わってきます。これを目標心拍数といい、その人の最大心拍数に対する割合で表します。
最大心拍数とは?
最大心拍数とは、その人の心臓が耐えられる心拍数です。実際にそんな運動をしてしまうと生命の危険もあるので、実際に極限まで頑張って測定するなどということはせずに、数式によって最大心拍数を出すのですが、いくつかの考え方があり、いくつもの計算式が発表されています。■よく紹介されている簡易型
- 一般の方:最大心拍数=220-年齢
- アスリート:最大心拍数=210-年齢
正直な話、筆者でもちょっと激しいトレーニングをすると簡単に160ぐらいになります。この後で説明する目標心拍数で言うと、ハードトレーニングを通り越した危険ゾーンです。実際には、このように個人差があり、そんなに厳密に考える必要はないでしょう。より正確に最大心拍数を測るには、1,200mの全力走などもありますが、トレーニングを積みながら少しずつ探っていかざるをえないのかなと思います。
運動目的によって変わる目標心拍数
さて、本題の「目標心拍数」。運動目的によって、その人の最大心拍数に対して効率的なレベルの割合があります。これが目標心拍数で、やはりこれもいくつかのゾーニングが発表されています。suunto社の製品取扱説明書に記載された表によると以下の通りです。
目標心拍数:運動強度:30歳:50歳
- 80~90%:非常にきつい:152~173:142~160
- 70~80%:きつい:133~154:124~142
- 60~70%:ややきつい:114~134:107~124
- 60%以下:楽:114以下:107以下
POLARが発行する「心拍数を計るとランニングがもっと楽しくなる!」によると、以下の通りです(※パーセンテージは最大心拍数に対する割合)。POLAR方式で実際の心拍数は次の計算式を使用します。
「目標心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数」
最大心拍数は220-年齢、安静時心拍数は朝目覚めたとき、起き上がらずにそのまま計測した脈拍。この計算式で筆者の目標心拍数を計算するとミドルペースでは、134~145でやや低い感じはあるもののほぼマラソンのペースです。
運動強度:ペース
- 91%以上:オーバーペース基本的にはこの領域には踏み入らない。まさにレッド・ゾーン。
- 85~90%:ハード・ペース上級トレーニングでスポット的に取り入れることも。
- 75~85%:ミドル・ペースレースが近づいたらこのレベルのペース走も。
- 60~75%:イージー・ペース健康維持のマラソンはここまで。マラソン練習の基本でもある。
- 60%以下:リラック・スペース日常生活をちょっと超える。スローランニングはここから。
2社の方式で自分で計算してみましょう。一般的にはそう大きな違いはないと思います。その人の持って生まれた心拍能力もあり、運動をしているか、健康か等々でこれらの表の通りとは限りません。
運動の質量を評価
大雑把ないい方かもしれませんが、マラソン完走を目指す初心者なら目標心拍数は70%程度、サブフォーを目指すなら練習の50%程度を75~80%に、サブスリーを目指すなら練習の40%を75~80%、40%を80~85%程度の強度が必要なのかなと思います。一方、サブスリーまでなら85%以上の強度の練習は必要ないとも思います。このように、目的に対して「運動強度×時間」というように運動の質量を評価します。心拍トレーニングの方法
平坦路で行う場合、目標心拍ゾーンを設定しておきアラームで教えてくれるように設定します。そのゾーンを越えても下回ってもいけませんが、「きつい」設定では走り始めからそのゾーンで走ることはできないので、どのくらいの運動でそのゾーンに到達できるかを調べつつ走り始めます。どのくらいで体が動くようになるかというのも、体調を知る上で貴重なデータです。ポイント感の距離がわかっているコースならポイントごとにラップを取ります。わからないコースでは、1kmごとの自動計測をしてくれるセンサーを併用すると便利です。
心拍数は目標心拍数より高くても低くてもいけない
アップダウンがあるコースでは、速度も距離もあまり関係ありません。もっぱら心拍数の管理です。目標心拍数を設定したら、上りでそれ以上に上がらないように、下りでは下回らないように注意し、アップダウンに関わらず一定の心拍数で走るように努めます。上り坂では、上りはじめはそれほどでもないのですが、上るほどに心拍数が上がっていきます。下りではかなりのスピードで走っているつもりでも、心拍にかかる負荷は減っています。それだけまだ余力があるということです。ただし、足の筋肉がしっかりできていないうちに下りでスピードを出すと故障を起こしがちになるので、下りでのスピードアップは故障に気を付けながら行います。ただ、筋力さえ鍛えれば、まだまだ心拍力には速く走れるということがわかるでしょう。
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