温暖化対策から生まれた処方「生脈散」
大棗はナツメのこと。鉄分が多い |
「朝鮮人参+麦門冬+五味子は、『生脈散』という有名な処方で、13世紀金元代にできたものです。中国では気候が温暖化し、多くの人々が大都市に集まったために、発熱を主症状とする感染症が増えました。これを研究し『温病学』という分野が発展しました。中医学のバイブルの『温病条辨』という本には、夏の暑熱時期、口渇、多汗、動悸、心臓が苦しい、呼吸が荒くて喘息気味の時に生脈参を使うと記載されています」
つまり熱さに対する耐久力が不足して倒れる人(例えば「熱中症」なども)、汗がたくさん出て脈が弱くなったときに、文字通り脈を生じて元気づける処方として開発され、以来暑い夏対策にごく一般的に服用されています。中国ではドリンク類もあって、「薬」という認識のされ方ではないようです。
「夏には、暑さによる汗のかき過ぎによる体液減少(陰虚)と食欲不振によるエネルギー不足(気虚)が重なりやすいのです。この状態を『気陰両虚』といいますが、まさに生脈散はトレーニングによる疲労対策に向いた処方であるといえます。今また地球の温暖化が始まって、現代においても活躍している処方です」
アミノ酸の補充も考慮している
さらに馬俊仁コーチの工夫が巧妙なのは大棗と鶏を加えていることです。大棗は鉄分豊富で養血作用があります。女性アスリートは特別に多くの鉄分を取らなければなりません。阿膠だけでなく、ここにも大棗を加えているわけです。そして鶏です。夏バテ対策のおすすめ薬膳に冬瓜と鶏のスープがあります。冬瓜には体を潤す一方、体の水分代謝を促進するための利尿作用もあります。暑いからといって水分を摂りすぎると、水分の代謝が悪くなり体が重だるく感じます。高温多湿の気候ではよくなりがちです。