肌荒れも治療より予防を
アスリート御用達のさまざまなクリームと軟膏類。それぞれの特徴を理解して活用すれば、ランニングライフも快適に |
今回は、空気の乾燥と共に生じる、肌のアクシデントへの対処法についてご紹介しましょう。ただし、お断りしておきますが、ここで紹介するのは、美顔作りのメイクアップのためのスキンケアではないことをお断りしておきます。ランニングを始めてから、最初の冬を迎える方は特にご注意を。
*注意 ここで紹介するクリーム類が、人によっては肌に合わずアレルギー症状を起すことも考えられますので、初めて使う場合には、まず少量を比較的皮膚の厚い部分に使用してアレルギーの有無を確認してください。
ランナーは肌のダメージを受けやすい
まずクリーム類の使い方をご紹介する前に、なぜランナーの肌が荒れやすいのか説明しておきましょう。まず、肌の露出が多いことが挙げられます。寒さや暑さ、風、乾燥など外部から体調に影響を与える要素を中医学では外邪と呼びますが、外邪の影響が大きくなるのがこれからの季節です。皮膚は乾燥を嫌います。特に皮膚は、濡らしたり乾燥させたりを繰り返すと荒れが急速に進みます。ウール製品や皮革製品の洗濯を繰り返すと、縮んだり艶が消えたりしわが増えたりすることはよくご存知と思いますが、人間の皮膚も同じことです。
唇は基本のクリーム「ワセリン」で
空気が乾燥して最も敏感に皮膚や粘膜が荒れるのは、唇ではないかと思います。走っていると呼吸が速くなります。唇や喉を通過する空気の流れが速くなります。洗濯物に強風を当てると速く乾くのと同じことで、たいへん乾燥します。秋になると速く走ったときに、のどが乾いてひきつれるような経験をされる方も多いのではないでしょうか。これも同じ理由です。そんな唇の乾きに対する予防措置としては、リップクリームがありますが、中には皮膚を柔らかくしすぎてしまう成分のものもあるようです。一番簡単な予防法は、ワセリンを塗っておくことです。
喉の乾きもいってみれば皮・粘膜の乾燥です。喉にワセリンを塗るわけにはいきませんが、喉に清涼感を与えて潤いをもたらす漢方薬があります。もともと咳止めの漢方薬で、潤肺糖奬という製品です。のどにべたつかないのど飴でも多少の効果があります。
日焼け予防と保湿と撥水
顔や肩、腕、脚などの露出部に対する対策は、どのようにしたらよいでしょうか?秋から冬にかけての日差しは、夏ほどではありませんが。空気が乾燥している分だけ紫外線が弱まりにくく、寒くても日焼けします。私は、これまで日焼け止めクリームを使ったことがなかったのですが、毎年強烈な日焼けで悩まされる富士登山競走に、今年初めて使ってみました。ほんのうっすらと塗っただけでこんなもので効果があるものか(といって、厚く塗るのは毛孔が塞がれるようでそれもいやだし)と半信半疑でしたが、見事な効果でした。うっすら日焼けはしましたが、例年のように赤焼けすることもなくその後皮が剥けるということもありませんでした。
ただ、塗っていなかった脚は赤くなり、やはり塗り忘れた耳たぶは後で皮が剥けました。長時間のマラソン、紫外線の強い山岳地を走るレースに出場する方にとって、日焼け止めクリームはマストアイテムだなとつくづく思った次第です。
冷たい雨から肌を守る
ワセリンは、マラソンを走るときに必ずご厄介になるクリーム |
体温を内部から高めるには、ショウガ湯や唐辛子湯、葛湯などを飲むのが一番ですが、その前に冬のレースで雨が予想される場合に対処しておく方法があります。どしゃぶりのような雨なら、登山用のゴアテックスのレインスーツのジャケットを着てしまいます。一般的な雨ならウインドブレーカーやベストを、雨の状態によって着分けるといいでしょう。ここまでは、ウエアによる皮膚の防御です。
小雨だったり、スタート時は降っていないが途中から降雨が予想されるような場合はどうでしょうか。こんな時はワセリンの登場です。雨に濡れると特に冷たく感じたり動きが大事な部分にワセリンを塗っておきます。肩、肘、手の甲、お腹などです。この場合のワセリンの役目は、雨に対する防水のコーティングです。付いた水滴が流れるようにやや厚めに塗っておきます。
晴れて湿度が低いときは、皮膚が乾燥しますから、保湿クリームを擦り込み、その上をやはりコーティングする意味で、薄くワセリンかそれに類するクリームを延ばしておくといいでしょう。