■Steinbergが開発したVST System Link
そこで登場してきたのが、Steinbergが作り出したVST System Linkというものでした。これは、まさに負荷分散をするためのネットワーク・システムで、SteinbergのCubase SX/SL/SEやNUENDOを接続し、エフェクトであるVSTプラグインやソフトシンセであるVSTインストゥルメントを別のマシンに分担させることができるというものです。複数のマシンにCubase SXなどをインストールすると高価になるし無駄も生じるため、VST System Link用のスレーブソフトであるV-Stackという9,000円程度で手に入るソフトも登場しており、これを利用することもできます。
ただし、このネットワークというのがちょっと特殊な世界になっています。というのは、このネットワーク接続には、LANケーブルを使うのではなく、adatやS/PDIFといったデジタルオーディオのケーブルを使うからです。このケーブルにオーディオ信号だけでなく、MIDI信号や各コントロール信号も送ってしまうことにより、サンプル単位での同期がとれるようになっているのです。
なかなか画期的なシステムではありますが、間にサンプリングレートコンバータの入らないS/PDIFでないと使うことができませんし、本格的に利用するには、S/PDIFではなく、adatが必要となり、双方のマシンにadatインターフェイスを入れるとなると、かなり高価なシステムにならざるを得ないというのが一つのネックではありました。
■LANで負荷分散を実現化したFX Teleport
ところが、ここに来て、画期的なシステムが誕生しました。それがFX-maxという会社が開発した
FX Teleport
というソフトによるシステムです。これは考え方的にはVST System Linkと同様にネットワークを組んだ複数のマシンで負荷分散させるというものですが、FX TeleportはVST System Linkと異なり、S/PDIFやadatでネットワークを組むのではなく、通常のethernetのLANで負荷分散できるというものなのです。
これまで、ほぼ無理などといわれていたLANのネットワークを使ってのオーディオの同期を可能にし、簡単に負荷分散できるというのですが、ちょっとにわかには信じられません。
現在のところ、国内に代理店はなく、ネットワーク上の英語でのみのサポートとなっていますが、ここに書かれているFX Teleportの特徴を読んでみると、気になるレイテンシーやジッターに関する記述もありました。それによると、まずジッターは発生しないとのこと。なぜなら、バッファーを取ってデータ転送しているので、ネットワークを介して揺れが怒ることはないとのことです。しかし、バッファーが大きくなれば、当然レイテンシーが生じ、音にズレが出てくる可能性が高くなります。しかし、それについても、128~256サンプル(場合によってはそれ以下)であるため、気になるようなレイテンシーはなく、ほぼリアルタイムなシステムが構築できると書かれていました。
でも、本当なのでしょうか……。