デリケートクリームの特徴を改めて考えてみます

新しい靴や革製品を入手した時、「どのクリームでケアしてあげたらいいのかな?」と迷われた経験は、どなたにでもあるでしょう。過去に同じような製品を使った経験がある場合はそれに従えば済むのですが、初めての質感の素材や色だと…… ふと考えてしまうのは自然の成り行きです。「ああ、買う時にお店で聞いておけばよかった」と後悔しても、それこそ後の祭り。

そんな時に絶対に重宝するのが、「デリケートクリーム」と呼ばれる乳化性クリームでしょう。ペースト状が主流の通常の乳化性のものとは異なり、ジェル状・ゼリー状になっていて、使っても革に艶は殆ど出てくれない、あれです。いずれも蝋分を殆ど含んでいないが故に出て来る特徴で、だからこそ様々な革に使用可能な訳です。

一見味気無い存在であるものの、水分や油分は革に確実に補給してくれるので、無色の乳化性靴クリームとは別にこれを常備されていらっしゃる方も多いかもしれません。
 
革靴用デリケートクリーム

困った時の助け船的な存在のデリケートクリーム。革の種類を殆ど気にせずに使えるケア用品ですが、実は各社で微妙に特徴が違います。


ただしこれ、各社によって使用感がずいぶん異なる製品である事は意外と知られていないようです。そこで今回は、代表的な3銘柄のデリケートクリームの特徴を改めて検証した上で、それぞれに最適な使い道を考えてみたいと思います。
   

革靴用クリームの大定番! まずはこれを試してみよう!

「元祖デリケートクリーム」と呼ぶにふさわしい、M.モゥブレィのものです。革に対して必要以上に油っぽくならずに瑞々しさを与えるのが特徴で、汎用性の広さでは定評があります。

「元祖デリケートクリーム」と呼ぶにふさわしい、M.モゥブレィのものです。革に対して必要以上に油っぽくならずに瑞々しさを与えるのが特徴で、汎用性の広さでは定評があります。


デリケートクリーム、と言って多くの方が真っ先に思い出すのは、このM.モゥブレィのものではないでしょうか?正に「元祖」と呼ぶにふさわしい存在で、プルンとした質感などこのクリームの特徴を形作った商品と申しても過言ではありません。個人的にも、今まで累計で何個使ってきたのか数えきれない位にお世話になっている商品です。

自分の記憶が確かなら、このクリームが以前のブランド名である「メルトニアン」の名の下に我が国で広まり始めたのは、1980年代後半の事だったと思います。

「フランスの某有名革製品ブランド(既製品としては今日でも、他社より品質が上と見なされているところ)のメンテナンス・リペア部門がこれを使っている」との触れ込みで、靴店だけでなく東急ハンズやセレクトショップも見掛けるようになり、それまでの乳化性クリームとは明らかに異なる質感も相まって、急速に知名度を上げていきました。

国際的な企業買収による商標権の移動が原因で、ブランド名こそ2003年から「M.モゥブレィ」と変更になったものの(「MELTONIAN」の商標は、一般消費者向けの製品については、「KIWI」等も販売するアメリカのサラ・リーグループが現在保有します)、商品そのものは以前と殆ど変化ありません。

使用感としては、昔も今も「下手に油っぽくならずに、革に瑞々しさが確実に蘇る!」印象です。必然的にシミなどは起こり難く、それ故牛革のみならずラムスキン(仔羊)やキッドスキン(仔山羊)、それにリザード(トカゲ)やクロコダイル(鰐)等のエキゾチックレザーの靴にも全く不安なく使えるのが魅力です。

まあ、何と申せばいいのか、小さい頃に祖母が色々な場面で使っていたオロナインH軟膏とかメンソレータムみたいな存在でして、混乱してしまった時に「これなら少なくとも間違いではないだろう」的に、ふと最初に手を出してしまうケア用品です。
 

疲れたアッパーを回復させたい時はこれ!

サフィールのデリケートクリームは、他社のものに比べ良い意味で「栄養」を感じさせてくれるのが特徴です。かと言ってシミにもなり難いのも嬉しい点。

サフィールのデリケートクリームは、他社のものに比べ良い意味で「栄養」を感じさせてくれるのが特徴です。かと言ってシミにもなり難いのも嬉しい点。


それまでフランスでしか見る事が出来なかったサフィールのデリケートクリームが、日本で入手できるようになったのは2002年頃だったでしょうか?ここのブランドの看板である「ノワールシリーズ」のものと似た蜜系の香りがして、ちょっと良い予感がしたのですぐさま購入してしまったのを未だに覚えています。幸いなことにそれは見事に的中し、それまでのお手入れ用品には無い独自の使い心地が得られたのに驚いたものです。

その決定的な違いは「デリケートクリームなのに、水分だけでなく油分がしっかり入る」点でしょう。パッケージを見ると、実際ホホバオイルが含有されているようで、その為なのか蝋分から出るものとは明らかに異なる重厚な艶が、革に塗ってしばらくしても持続してくれるのです。瑞々しいと言う以上に、「乾燥から革をしっかり守ってくれる」感じの使い心地です。

ですのでこれは、様々な革に使うと言うよりも、大分疲れた牛のスムースレザーのアッパーに対して、通常の乳化性クリームを入れ易くするための下地剤として用いると、その性能が最大限に引き出されて来る気がします。より具体的には、お手入れを長期間怠ってしまった牛革の靴のアッパーに、まずこれを塗って丸一日置いた上で通常の乳化性クリームを入れて行くと、シミを起こさず確実に革のコンディション回復が可能になります。

以前はこのクリーム、ちょっとトロトロ・ユルユル過ぎるのが難点でしたが、日本での代理店がルボウになって以降この状況も改善され、非常に扱い易いものになっているので、古い靴の「疲労」にお困りの方は、これを用いたの救助・回復作戦を是非ともお試しになられて下さい。
 

汚れも一緒に! クリーナー代わりに使うならこれ!

コロニルのデリケートクリームは、汚れをしっかり落とせるのが特徴です。通常のクリーナーでは意外と落とし難い「水ジミ」も、付いてあまり日数が経っていなければこれで簡単に落とせます。コロニル・デリケートクリーム

コロニルのデリケートクリームは、汚れをしっかり落とせるのが特徴です。通常のクリーナーでは意外と落とし難い「水ジミ」も、付いてあまり日数が経っていなければこれで簡単に落とせます。コロニル・デリケートクリーム


読者の皆さんの中には、靴の汚れを取るのにクリーナーを用いるのに抵抗がある方がいらっしゃるかも知れません。要領(参考:液体クリーナーの使い方を深く考えてみる!)さえ掴んでしまえば全く心配無用なのですが、それでもなお不安と言う方の中にはデリケートクリームをクリーナー代わりに使っている方も多いようです。そんな方にお勧めしたいのが、こちらのコロニルのデリケートクリームです。

コロニルには以前から、「GELクリーム」と言う名の類似品があったのですが、それに比べこのデリケートクリームは、汚れ落としの性能を大幅に上げているのが特徴だからです。

その効果の高さはパッケージにわざわざ(クリーナー)なる表記を別掲してあるほどで、水分や油分の補給もしてくれますが、実際に使ってみると、布に付着する汚れの度合いから見ても、やはり汚れ落とし的な要素が強い商品である事を実感できます。下手をすると同社の「マイルドクリーナー」よりも、その性能は高いような気も……。

ですのでこれは、素直に汚れ落としを主眼に用いるのがベストな使い方でしょう。その性質上、靴の場合はアッパーだけでなく、アウトソールのお手入れにも適した製品と言えるかもしれません。

また、雨に降られてしまった後にアッパーに付きがちな雨ジミを目立たなくさせるのにも、このクリームは効果大だと思います。他のデリケートクリームに比べ店頭でなかなか見つけられないのが難点ですが、ネット通販等では比較的容易に見つけられますので、ご興味ある方は丹念に探されてみて下さい。

いかがでしたでしょうか?同じ名称の商品でも効能が結構違うのがこのクリームの面白いところなのです。「どれが一番優れているか?」と言うよりも、これまで説明申し上げたとおり適材適所的な観点で用いた方が、その効果を最大限に堪能できると思うので、「ちょっと困ったな?」的な時を見計らって、それぞれ楽しく買い足してみて下さい!

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