美しい、そして、履きやすい!
スコッチグレインの新作の内羽根式クオーターブローグです。ステッチの色などにデザインセンスが光ります。確かに細身の木型ですが、必要以上にロングノーズが目立たない型紙のバランス構成も見事です。 |
2008年も11月半ばとなって、企業にお勤めの方ですとそろそろボーナスの額が気になり始める時季になってきました。この冬は世界的な経済混乱も絡んで「必要以上の贅沢はできれば控えたいけど、品質に優れた靴が欲しい……」という感じの方も多いのではないでしょうか? 今回はそんな方々も必ずやご満足いただける、そして「生まれも育ちも、東京・ジャパン」の名セリフでお馴染みの我が国のメーカー・スコッチグレイン(Scotch Grain)のこの秋の新作を、幾つかご紹介致しましょう。
まずは上の写真、木型を3EからEに細く変更したのを機にスタイル自体も大幅にモデルチェンジしたスエードシリーズから、内羽根式クオーターブローグをご覧下さい。このシリーズには他に外羽根式プレーントウと内羽根式のスワールモカシンがあるのですが、ディテールに何気なく一番凝っていて、造形的にもダントツで洗練されているのがこのモデルです。靴全体から出てくる雰囲気からは即座に日本製だとは気付けず、大方の人が「イギリスのメーカーの最近の作品」と勘違いされるのではないでしょうか?
具体的には、例えばステッチに用いる色をアッパーの色から1トーン明るくすることで、ともすれば木型の細い・太いに関わらず膨張した印象になりがちなスエードの靴の造形に、都会的なメリハリを持たせることに見事に成功しているのです。コバ上面も確信犯で未着色ですし、こんな洒落た陰影の付け方、ビスポークでかつ感覚の鋭いアトリエの作品じゃないと通常はお目に掛かれませんよ! 鳩目の縦横双方の位置は古臭過ぎずモード過ぎない絶妙な間隔ですし、更にはつま先にメダリオンを入れず、つまりセミブローグではなく敢えてクオーターブローグとすることで、毛足の短く柔らかなイタリアンスエードの質感を更に引き立てている点も見逃せません。
底材はこのメーカーが新たに開発した、前半分がラバーで土踏まず部がレザーの「グリッパーソール」と呼ばれるもの。一般的にはラバーソール=「足アタリが硬い」と言う先入観を持ちがちですが、どうも原料の配合率に秘訣があるようで、このソールは嘘のようにアタリが柔らかいと同時に踏ん張りが利き、対照的に土踏まず部はレザーなので不用意にグラ付く心配もありません。因みにこのソールのレザー部分は、スコッチグレインがオールレザーソール用に確保した原革からそれを繰り抜いた残りの、革質が全く同じ部分を用いたもの。ソールの裁断も自社で行っているからこそ可能な創意工夫ですし、もちろん価格の抑制にも一役買っているのです。
スエードの色は上の写真にある明るめのオリーブブラウン、引き締まっていながら不思議と華やかさも漂う黒、そして服の色柄をあまり選ばない僅かに緑色掛かったダークブラウンの3色です。個人的にはイタリアンスエードの持ち味である「色の冴え」が最も際立つオリーブブラウンが好みですが、一般的に使い勝手が良いのはあとの2色でしょうか。冬の土曜日のちょっとしたお出かけの際に、グレイフラノ無地のスーツにブルーシャツとくすんだシャーベットイエローの地味な小紋タイを合わせて、上をキャメルベージュのポロコートでまとめた装いの足元に、オリーブブラウンのこの靴を持ってゆきたい! などとワクワク考えてしまうのですが、どうかな?
【SCOTCH GRAIN/SUEDE No.5380】
■色 : 黒(ブルーグレー)、ダークブラウン(ブラウン)、オリーブブラウン(ベージュ)。 各色の隣にある( )はステッチの色です。
■アッパー素材 : カーディフスエード(イタリア製)
■サイズ : 23.5~27.5 0.5サイズ刻み。 いずれもEウィズ
■価格 : \30,450(税込み)
■付属品 : シューズキーパー付き
向かって左から黒・ダークブラウン・オリーブブラウンと全3色を並べてみました。イタリアンスエードの質感も申し分なく、お気に入りの色が必ず見つかるはずです。 |
この靴で採用した「グリッパーソール」です。前半分のラバーの柔らかさがなんとも頃合良く、足アタリの良さに驚いてしまいます。もちろん耐久性も十分兼ね備えていますよ。 |
「ちょっと思い切って、今までにないモダンな靴をこの冬試してみたいんだけど……」と仰る方は、次のページへ!