イマが旬! スワールモカシン

ジョンロブ(パリ)のミラン
ファッショントレンドを意識したジョンロブ(パリ)のミラン。21世紀に入り英仏融合のトラッド路線から、モダン性重視にブランドコンセプトが確実に移行したロブパリ。その転換期に生まれたモデルがこのミランです。


アッパーの甲周りにあるモカシン縫いがU字の蓋状ではなく、2本線のままつま先に落ち込んでゆくスタイルの靴を、「スワールモカシン(Swirl Moccasin)」と呼びます。”Swirl”とは英語で「水平に見える渦」の意味で、確かにこの種の靴を真上横方向から見ると、モカシン縫いの線がジェット気流のように水平につま先に流れてゆく感があります。上の写真のジョンロブ(パリ)の靴は、モカシン縫いが途中で消えるので厳密にはスワールモカシンではありませんが、このブランドらしい洗練されたアレンジと考えてください。

この種の靴、実はその線がモカシン縫いでなくとも、例えばブローギングや単なるステッチングであったとしても、もはや「スワールモカシン」と呼ばれてしまっています。一応総称としては「バイシクルフロント(Bicycle Front)」なるものもあるのですが…… また紐靴ではなくスリッポンであっても、こう呼ばれます。いずれにせよ、1960年代初期のモッズムーブメントの頃に流行ったアンクルブーツのスタイルが、1990年代後半にミラノやパリのモード界から発信されたネオモッズムーブメントの中で再評価され、ブーツではなくシューズとして蘇ったものと考えていただいて結構です。

斯様に感覚美的な背景を持っているため、2007年時点で依然勢力を保っている、モード系ラグジュアリーブランドのものによく見られる細身の黒系スーツとの相性が、本来は理想的なものでしょう。その意味では、個人的には一過性のデザインの感があるのも正直なところです。ただ、2本の水平線の視覚的効果で足が細長く見えるのと、折からのロングノーズな靴の流行とが重なり、このスタイルは21世紀に入って以降、特に若い世代向けのドレスシューズのデザインに驚くほど急速に勢力を拡大し、今日に至っているのも事実です。皆さん朝夕の通勤時間帯にでもチェックされてみて下さい。足から上の装いや世代、それにメーカーやブランドがどうであれ、この種の靴を履かれている方、大変多いですよ。でも、ここまで猫も杓子も無意識に履かれてしまうとねぇ……


Vチップは汎用性、高いです!

Vチップの履き方の一例。
Vチップって、不思議と色々な服と合わせられてしまうのです。その意味からもスポーツ&カントリー起源のUチップの進化形と言えるでしょう。


スワールモカシンに関しては、上述の通り今後普遍化してゆくのか単なる感覚的流行で終わってしまうのかが未知数です。ゆえに履き方に関してもまだ定義し切れない、というかまだ無理に定義する必要もないのが実情だと思います。今後の成り行きを、注意深く見守ってゆきたいところですね。

対照的にVチップは、履き心地と美観の両面から合理的かつ論理的に突き詰められて完成していった背景があるせいか、Uチップ系の中では現在一番汎用性が高く、実は前回ウダウダ申し上げていた(!)スーツとの合わせも、難なくできてしまう気がします。

流石にフォーマルウェアや重厚なダブルブレストのジャケットなどには合わせられませんが、例えば何泊かの出張や旅行で靴を1足しか持って行けない際などには、このVチップこそ今日最適な靴かもしれません。足にも優しいし、モカシン縫いもシンプルなので靴のスタイルが必要以上に出しゃばって来ず、ゆえに合わせる服のスタイルも色合いも気にしないで済むからです。

そう、偶然”V”同士ではありますが、これはちょうど外羽根式の Vフロントプレーントウを若干カジュアルにした使い方と言えそうです。その意味では、Vフロントではちょっと生真面目過ぎると考える方が代わりにこのVチップ、などといった選択肢も大正解だと思います。皆さんもこの微妙なニュアンスの「差」を、上手に活用してみて下さいね。



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