エキゾチックレザーの輝きを保つ手入れ方法とは?
この靴は1980年代に日本のREGAL(当時の名前は日本製靴)が、その持てる力を最大限発揮して製造した伝説のブランド”SHETLAND FOX”のタッセルスリッポンです。アッパーの素材はパイソン(ニシキヘビ)。博物館でなくてもこの輝き、いつまでも維持させたい!
今回はこのコードヴァンとは全く対照的なアッパー、クロコダイル(ワニ)やリザード(トカゲ)などの爬虫類を中心とした「エキゾチックレザー」の靴のケアについて見てまいりましょう。真っ当なビジネススタイルには絶対不向き、カジュアルであっても昼間のみの着用が望ましいこれらの靴は、極めて高価な価格も含め「贅沢」そのもの。ゴージャスの一言に尽きるその輝きは、好き嫌いや実際に所有するかどうかはともかく、関心そのものは誰しもが一度は抱くのではないでしょうか?
2004~2005年前後にメンズシューズの素材としては稀に見る大ブームとなったため、それなりにポピュラーな存在にはなりましたが、ケアを誤ると一大特徴である光沢が全く無くなってしまう、注意を要する皮革でもあります。これらの靴をその頃入手された方で、履く場が見つからないのとケアの仕方が分からないのとで、靴箱の中に眠らせたままの方、読者の中にも結構多いのでは? そのような方だけでなく、この種の素材を用いた婦人靴がお好きな女性の読者の方も以下、ご一読いただければと思います。
エキゾチックレザーの手入れ……様々な光沢の出し方
エキゾチックレザー、特に爬虫類のものについては、次に挙げるケア用品をまずは目立たぬところで試用してみるのが、成否を分ける大きなポイント! 光沢を失いたくなかったら、面倒臭がらずにお願いします。
染色が終わって乾燥させた後、革の表面を重いメノウの玉を数百キロもの加重で幾度も往復させる工程が入るのも特徴です。これを「グレージング」と言うのですが、摩擦と圧力で革の表面を潰して均質化させ、透明感だけでなくあの艶めかしい光沢を自然に生みだすわけです。最近はこの工程を敢えて抜いてマットな雰囲気に仕上げる場合もありますが、主にカバン向け。紳士靴ではこの種の仕上げのものはまだほとんど出てきていません。
ただ、注意しなくてはいけないのは、バッチリ光沢のあるものでもグレージングを省いているものがあることです。これらは代わりに、主にラッカー系の仕上げ剤で艶を出していて、主にレディスのハンドバックなどになるのですが、まれに靴でも「用いられてしまう」ことがあるそうです。光沢がグレージングに依るものなのか仕上げ剤に依るものなのかは、われわれユーザーはもとより靴メーカーの方でさえ容易に見分けがつかないほど、表情が酷似しているからです。
小生もとあるメーカーの方からその種の話を伺ったことがあって、ラッカー仕上げであることが判明し、クレーム防止の観点から発売直前に急遽製品回収なんてこと、エキゾチックレザーの靴では間々あるらしいです。実はケアの方法も、仕上げがどちらに依るかで「どこまでできるか」が全く異なってしまいます。そのため、続いてご紹介するケア用品をまずは目立たないところで、爪楊枝を使うなどしてごく少量試用されてみることを、はじめに強くお勧めしておきます。
エキゾチックレザーの手入れ……クリームは「専用」と「デリケート」
エキゾチックレザーのケアには、爬虫類専用クリームとデリケートクリームを使います。
- まずは目立たない所に爬虫類専用の乳化性クリームもしくはデリケートクリームを付けテストします。ここであっという間に光沢が消えたものは、艶をラッカーで出したもの。クリームに含まれる溶剤にラッカーが反応し、それらが一気に揮発し同時に光沢もなくなるのです。
- おしぼりより気持ち水気が多い程度の雑巾で、靴全体をまんべんなく水拭きし、汚れを落とします。1.でツヤが消えた革の場合、ケアはここで終了。現状ではこれ以上のケアは不可能です。
- 1.で光沢がしっかり残っている場合は、それをグレージングで自然に出したものです。引き続き水分・油分の補給に爬虫類専用の乳化性クリームを、革の斑や節にクリームがたまらないよう注意しながら、布を用いてごく薄く塗ってください。
- その後は革の目に沿ってきれいな布で空拭きしてください。エキゾチックレザーはその表面が繊細で傷つきやすいので、ブラシは使わないほうが宜しいでしょう。
光沢を仕上げ剤で出した爬虫類の革は、どうして主に女性のハンドバック向けなのかは、もうお察しが付いたかと思います。靴は地面につきますから汚れや傷が付いてしまうリスクが高く、長持ちさせるためにはアフターケアがどうしても必要なため、「ケアができる革」を用いておかねばなりません。一方ハンドバッグの使用環境は通常そこまで苛酷ではないため、ケアにもそれほど神経質にならなくて済むからです。
爬虫類専用のクリームにはジェル状だけでなくスプレー状のものもありますが、基本的にはどちらも効果は同じですので、使いやすいほうをどうぞ。また、上記の3.で、爬虫類専用のクリームが手元にない場合は、1.で用いた蝋分のほとんど入っていない「デリケートクリーム」で十分代用が可能です。鞣しの段階で光沢がしっかり出ているため蝋分でそれ以上光らせる必要がなく、水溶性の酸性染料の色落ちもしないためです。オーストリッチ(ダチョウ)の革の場合も、デリケートクリームで上記と同様のケアを行って大丈夫です。この革も性質上、無理矢理光沢を出す必要のないものですから。
今回のケアは靴に限らずカバンであるとか、この種の革を高級品で用いることが多い時計バンドなどにももちろん応用が可能です。いずれにしても最初のテストを忘れずに行って下さいね!
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