ルビーの語源は、赤を意味するラテン語「rubeus」。和名は紅玉。その名の通り、あでやかな真紅に輝くこの石は、宝石のなかの宝石とでも呼びたい美しさを備えています。この石が7月の誕生石に選ばれたのは、炎熱の夏にふさわしい色だからでしょうか。現在の誕生石のもととなる12カ月の宝石リストが作られたのは、1952年のアメリカ。梅雨寒が続く今年の日本で選定されていたなら、きっと7月は別の宝石になっていたことでしょう。
▲《ELLE PARIS》プラチナの白と、ルビーの赤の対比が目に鮮やか。
Pt/ダイヤモンド/ルビー、リング¥45,000、ペンダント¥43,000
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古代インドでは、「宝石の王」を意味するラトナラジュという呼び名で呼ばれていたルビー。トーベ・ヤンソンの児童文学『たのしいムーミン一家』には、黒豹の頭ほどもある巨大な「ルビーの王さま」が登場します。世界で最も美しいこのルビーを求めて、眠れないままに夜空を駆けるのは飛行おに。彼は最後に「ルビーの女王」を手に入れ、満足して飛び去ります。
古代ローマの博物誌家、大プリニウスは著書のなかで「紅玉には雄石と雌石がある」と面白いことを述べています。どうやって雌雄を見分けるのかというと、オスのほうが輝きが強く、メスのほうが弱いのだそう。まさか、と思わず笑ってしまいそうですが、プリニウスは大まじめです。
ルビーはときに色を変え、迫りくる危難を持ち主に知らせたという伝説も残っています。イングランドの王妃キャサリン・オブ・アラゴンは、次第に色が褪せてゆく自分のルビーに、不幸の兆しを感じ取っていました。やがて1533年、夫のヘンリー8世はキャサリンの侍女であったアン・ブリーンと結婚。キャサリンはうち捨てられ、王の横暴を阻止しようとした多くの人々は斬首に。この不和はやがて、離婚を許さない教義のローマン・カトリックからイギリスの教会が独立する(王の離婚・再婚を正当化するために)という、歴史的事態に発展するのです。
ルビーの宝石言葉は、情熱・慈愛・威厳。その意味するところにふさわしい真っ赤な色は、コランダムという鉱物に含まれるわずかな酸化クロムによって発色します。この石を顕微鏡でのぞくと、内部に「シルク」と呼ばれる酸化チタンの細い針のような結晶が見られることがあります。ルビーは身のうちに、絹の衣を閉じこめているのです。
宝石商たちは昔から、ビルマ(現ミャンマー)に産するピジョン・ブラッド(鳩の血の色)を最も珍重してきました。現在、ルビーは色をよくするための加熱処理が加えられるのが一般的になっています。また、戦前の日本で流通していたもののなかには、ときおり合成ルビーが混じっていることがあります。ルビーは宝石のなかでは最も早い時期に合成が始まったという歴史が関係しているからなのですが、ルビーをめぐる事情の複雑さは、この宝石の美しさに魅せられる人々の多さをそのまま物語っているといえるでしょう。
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