死亡後の住民税を納める必要はある?

ごくまれなケースではあるのですが「私の父が昨年、他界しました。その後、住民税の納税通知書が届きました。このようなケースでも住民税を納める必要があるのでしょうか?」というような質問をいただきますが、このような質問の中に、住民税の課税のポイントとなるエッセンスが含まれているものなのです。住民税がかかる人の共通点とその仕組みを検証していきましょう。
死亡後の住民税の納税義務は?住民税の課税の仕組みをおさえましょう

住民税の課税の仕組みをおさえましょう

ポイントその1 : 住民税の基準は前年である

住民税の基本的な仕組みは、前年の所得の状況に応じて、今年課税されるということです。このような仕組みのことを「住民税は前年課税」と称したりしていますが、上記の事例をわかりやすくするために、お父様が他界した年月が平成29年5月10日だったとして解説しましょう。

この場合、平成28年中に何らかの所得を得ていれば、平成28年の所得の状況に応じて、平成29年度の住民税が課される、これが住民税の前年課税の具体例となります。
前年の所得状況に応じてかかる住民税課税のイメージ図(筆者作成)

前年の所得状況に応じてかかる住民税課税のイメージ図(筆者作成)

 

ポイントその2 : 住民税の基準日は1月1日である

住民税の納税通知書は各市区町村から届くのが通常ですが、例えば平成28年の中途でA県B市からC県D市に引っ越しをしたというような場合、平成29年度の住民税はA県B市から届くのでしょうか? C県D市から届くのでしょうか?

答えはC県D市から届きます。なぜならば、住民税の基準日のことを「賦課期日」というのですが、それは1月1日の住所地という決まりがあるからです。したがって、平成28年の中途でA県B市からC県D市に引っ越しをしたというような場合、平成29年1月1日にはC県D市に住んでいるということになります。したがって、平成28年の所得の状況に基づいて、賦課期日である平成29年1月1日の住所地であるC県D市から課税されるということになります。
確定申告書住所欄の記載例(出典:国税庁ホームページより)

確定申告書住所欄の記載例(出典:国税庁ホームページより)


上記が国税庁がホームページなどで公開している申告書の記載例です
(実際に確定申告書作成コーナーを活用して申告書を作成し、プリントアウトするとこのような申告書が出力されますが、充分、申告書として使えます)。この左上上部をご覧ください。住所の記載欄の下に翌年1月1日の住所を記載する箇所があります。これが住民税の賦課期日の住所地を記載する箇所になっています(変更がなければ同上と記載します)。したがって、冒頭の質問者のケースでは、平成28年の所得の状況に基づいて、平成29年1月1日の住所地の市区町村から納税通知書が届くこととなります。
 

ポイントその3 : 住民税は所得の状況に応じて課税される

給与所得やアパートマンションからの家賃収入がある方の不動産所得、あるいは自営業の方の事業所得などはこのように前年の所得の状況によって、翌年課税されるという仕組みとなっています。

ただし、一口に住民税といっても、預金の利子などから差し引かれる利子割、配当金から差し引かれる配当割、株や土地・建物の譲渡に係る譲渡割などがあるのですが、通常の場合、個人の住民税といったら、大半を占めるのが、前年の所得の状況に応じて課税される所得割というものです(住民税の種類の中に均等割というものがありますが、その税額は原則4000円で、平成26年度~平成35年度までの10年間は復興特別税のよる負担が生じますがそれでも5000円です)。したがって、通常、住民税と言う場合、所得の状況に応じて課税される所得割を指す場合が多いと考えられます。

冒頭の質問事例の場合で考えると、平成29年5月に死亡していたとしても、納税通知書が届いたという事実から、平成28年には何らかの所得を得ていると考えられます。平成28年の所得状況についての言及はありませんが、平成28年分の所得の状況に応じて、平成29年1月1日の住所地から住民税が課税されるという仕組みになるということです。

さらに言えば、平成29年5月に死亡していたということですから、平成30年1月1日の住民地はありません。したがって、平成29年分の所得の状況に基づいて平成30年度の住民税が課されるということはありません。
 

ポイントその4 : 住民税は賦課課税方式で課税される

納税通知書に記載してある税額が適正かどうかという観点から見た場合、前年の所得の状況がどのように市区町村に伝達されているかも大きなポイントです。住民税の計算は「賦課課税方式」といって、市区町村が住民税の計算をすることになっているからです。

給与所得者の場合には給与支払報告書、個人事業主の場合には確定申告書に記載してある数値をもとに住民税課税がなされますが、年の中途で退職して年末調整を受けていない給与支払報告書や、所得控除が漏れたままの確定申告書が市区町村のデータとして届くと、誤った住民税課税がなされることとなります。

また、平成29年5月10日に死亡した方の場合、平成29年1月1日から5月10日までの所得の状況を、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内(このケースで言えば平成29年9月10日までに)に亡くなった方の住所地の所轄税務署に申告手続きをしなくてはならないという決まりもあります。この申告手続きのことを「準確定申告」といいます。亡くなった方の場合、所得税は現年課税ですから、年の中途でなくなっても税額の精算は行うこととなります。

ただし、
  • 亡くなった方が給与所得者の場合であれば、例外的に年末調整の対応者となりますし、
  • 亡くなった方が年金受給者で受給額が400万円以下、かつ、その他の所得が20万円以下
であればそもそも確定申告要提出者ではなくなります。
そのような場合には、「適用漏れの所得控除はないか」といったように確定申告することにより所得税の負担が減るのではないか、という観点から「準確定申告」をとらえてみるのもいいでしょう。

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