異なる制度、災害減免法と雑損控除の違いとは?
災害減免法や雑損控除は、地震や台風などの自然災害や火災、盗難などで生活用の住宅や家財道具などに損害があった場合に税金が軽減される制度です。
近年日本全国で地震災害や台風、集中豪雨、雪害などが多発しています。こうした被害に遭った上に税金の支払いがあるのは経済的に大変です。そんなときに助けになるのが災害減免法と雑損控除です。この雑損控除と災害減免法についての基本と確定申告について解説します。雑損控除は所得控除、災害減免法は税額控除
災害減免法と雑損控除は税の控除の仕方が異なります。災害減免法は「税額控除」、雑損控除は「所得控除」なので、制度の違いはもちろんそもそも税金が軽減される方法が異なるのです。税額控除は計算した税額から一定金額を控除します。また所得控除は収入金額から必要経費を差し引いた所得金額から控除します。細かい話ですが、計算する上で控除する(差し引く)ところが違います。
災害減免法と確定申告
災害減免法では、住宅や家財が地震・火災・風水害・落雷等の災害(盗難・横領は対象外)によって損害を受けた場合であることが要件です。その上でこれらの損害額から保険金や損害賠償金で補填される金額を差し引いた残りの額が時価の1/2以上となったとき、その年の所得が1,000万円以下の者は災害減免法が適用可能です。
災害減免法により軽減または免除される所得税の額は下記の通りです
- 合計所得金額500万円以下
……軽減または免除される所得税の額=所得税額の全額 - 合計所得金額500万円超750万円以下
……軽減または免除される所得税の額=所得税額の1/2 - 合計所得金額750万円超1,000万円以下
……軽減または免除される所得税の額=所得税額の1/4
雑損控除と確定申告
雑損控除は本人または生計を一にする配偶者やその他の親族が所有する住宅や家財が、地震・火災・風水害・落雷・盗難・横領等(詐欺や恐喝は対象外)によって損害を受けた場合に適用することができます。雑損控除で控除されるのは下記のいずれか多い方の金額になります。
- (差引損失額-年間所得額)×10%
- (差引損失額の内の災害関連支出額)-5万円
上記の通り、保険会社からの保険金などで支払われる分の金額があるときは、損害額からその金額を差し引きます。また雑損控除はその年の所得控除から引ききれない場合、翌年以降3年間繰り越して控除を受けることが可能です。
確定申告における災害減免法と雑損控除の違い
ここまで雑損控除と災害減免法についてお話ししてきましたが、それでもよく分からない人もいると思いますので、ここで両者の違いを比較しておきたいと思います。■主に対象となる災害
- 雑損控除……地震・火災・風水害・落雷・「盗難・横領」・害虫などの生物による異常災害等
- 災害減免法……地震・火災・風水害・落雷等の災害等
- 雑損控除……なし
- 災害減免法……被害額が時価の1/2以上、年間所得1000万円以下
雑損控除と災害減免法を選ぶ基準
雑損控除、災害減免法ともに要件があるので、それぞれの要件に照らし合わせてみて下記の場合には雑損控除がいいということになります(災害減免法は要件を満たさない)。- 所得金額1,000万円超 → 雑損控除
- 所得金額1,000万円以下 → 盗難や横領、シロアリなど害虫による損害、あるいは被害額が時価の1/2に満たない…雑損控除
災害減免法と雑損控除の注意点
次に災害減免法と雑損控除の注意点について押さえておきましょう。雑損控除と災害減免法は重複して適用することはできません。自分の状況を確認してどちらが該当するのか、もしくは両方該当するのかをまずはチェックした上でそれぞれの試算を行い有利な方を選択するという流れになります。
また雑損控除、災害減免法のどちらを適用するにしても確定申告は必要になりますから、この点も忘れないようにしておきましょう。年末調整で手続きされることはありません。会社員や公務員の人は年末調整が当たり前で確定申告に馴染みのない人も少なくありません。
災害の被害に遭った時期によっては、確定申告で手続きするのが半年から1年近くになることもあります。間が空くのでサラリーマンなどで確定申告が必須になっていない人は、うっかり忘れないようにしてください。税金が戻ってくる還付申告となるケースでは、確定申告の期間(原則2/16~3/15)以前でも手続きすることが可能です。
大きな災害があると税制上の特例措置がだされることがあります。申告や納付期限の延長はもちろん東日本大震災でも雑損控除は本来3年の繰越控除ができるものが5年に延長されました。
災害等で被災したときには国は地域の自治体からだされるこうした情報にアンテナを立てておくことを心がけておきましょう。
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