火災保険の家財と明記物件は違う
火災保険を住宅用の建物・家財に契約しても、実は補償されないものが家財の中にあります。所定の金額を超えた貴金属や美術品などを「明記物件」などと言いますが、所定の金額を超えるものは別に明記しないと火災保険の家財一式に含めることができません。明記物件を契約する際の注意点や火災保険における明記物件の引き受け上のポイントなどについて解説します。
<目次>
火災保険における明記物件とは何か?
明記物件についての定義について確認しておきましょう。まずは過去の火災保険における一般的な明記物件についてです。これらが保険証券に明記されていない場合、保険目的に含まれないのです。具体的には以下のようになっていました。
- 貴金属、宝玉および宝石ならびに書画、骨董、彫刻物その他の美術品で、1個または1組の価額が30万円を超えるもの
- 稿本、設計書、図案、証書、帳簿その他これに類するもの など
これに加えてその明記物件の金額を証明する書類(鑑定書など)が火災保険の契約上は必要でした。でした、と過去形にしているのは最近の各社の火災保険は少しだけ条件が変わっているところもあるためです。各社の状況については後で解説します。
地震保険と明記物件
明記物件の地震保険に関連する基本的なことをもう少し補足します。地震保険の約款でもこれらのものに類することが記載されています。通常地震保険の保険目的は建物および生活用動産に限られます。ところがこの生活用動産に含まれないものが列挙されています。一般的なものを一部挙げてみます。
- 通貨、有価証券、預金証書または貯金証書、印紙、切手その他これに類するもの
- 貴金属、宝玉および宝石ならびに書画、骨董、彫刻物その他の美術品で1個または1組の価額が30万円を超えるもの
- 稿本、設計書、図案、証書、帳簿その他これに類するもの
火災保険のときと同じように感じますが、気をつけなければならないことがあります。地震保険においては、こうした明記物件と言われるものは保険目的に含まれません。別途明記して契約するとかではなく、含めることができないのです。
いずれにしてもこうした明記物件に該当するものについては防災上あるいは防犯上の観点から被害が発生する前にきちんと事前の対策を考えておく必要があるわけです。
明記物件と勘違いしがちなものとは?
1個または1組の価額が30万円を超えるなどというと、例えば自宅にあるプラズマテレビ、ちょっと高額な家具などをイメージして火災保険の対象にならないのかと勘違いする人がいます。これらは家財一式の中に含まれていますので心配することはありません。明記物件はなぜ別になるのか?
なぜ分ける必要があるのかというと、明記物件に該当するものは金額の評価が難しいからです。プラズマテレビならメーカーや型式、購入年月などが分かればある程度金額が分かります。それに対して例えば絵画などは金額の設定が難しいのです。極端な話ピカソやゴッホの絵なら金額の算定はしやすいでしょうが、無名の画家の絵では500円でも買われないかもしれませんし、著名になれば5億円するかもしれません。
火災保険の家財は、このテレビとかこの家具というように個別に家財を記載して契約するわけではなく、家財一式1,000万円などというように契約します。金額の評価が難しいものは契約しにくいのです。
賃貸物件で明記物件に該当する場合のポイント
賃貸物件用の火災保険は、住宅なら2年間で保険料1万円とか2万円などのセットプランになっているのが一般的です。簡単にいうと補償をカスタマイズして増やしたり減らしたりはできないことがほとんどです。もし明記物件に該当するようなものがあれば、セットプランではなく火災保険を別に契約して個別のプランを作ってもらうようにしてください。
最近の火災保険と明記物件の動向
明記物件についてお話ししてきましたが、最近の損保各社の火災保険は対応が少々違います。一言でいうと各社対応が統一されているわけではありません。一つの結論としては、高額な貴金属や美術品などを所有しているなら、事前に損保会社や保険代理店などに相談するということです。しっかりした担当者であれば向こうから該当するものがないか聞いてくるはずです。
明記物件については忘れがちなところですので、こちらから話を振るのを忘れないようにしましょう。いくつかの損保の状況ですが、住宅用の火災保険で家財に火災保険をつけていることを前提にしてください。
1個または1組の価額が30万円超の貴金属等というのが前提ですが、損害保険会社によってはこれを100万円超などにしているケースがあります。また特約扱いで対応している火災保険もあります。このように必ずこうだと言い切りにくい状況になっているので、契約時に一言相談することが重要なのです。
また明記物件に該当するものを火災保険契約後に新たに購入した、あるいはすでに明記物件としているものを売却した場合などは追加あるいは削除する手続きを忘れないようにしましょう。
※損害保険会社及び火災保険商品によって内容が異なる場合があります。契約の際には必ず損害保険会社等に確認してください。
【関連記事】