重陽の節句とは
「重陽の節供」は、キクの花が咲く頃の節供だった |
また別名を「菊の節供」といわれるのは、本来は旧暦9月(いまの暦では10月ころ)でちょうど菊の季節にあたっているためです。
現在の日本ではなじみが薄くなってしまった「重陽の節供」ですが、中国の故事にならい長寿を願う行事として平安時代には宮中行事となり、後に庶民へと広まったものです。
「桃の節供」同様、菊には薬効や邪気を祓う効果があるとされていて、宮中では「菊見の宴」を催し歌を詠んだり酒に菊の花を浮かべた菊花酒を楽しんだとか。また、いまで言う品評会にあたる「菊合わせ」という催しも行われていました。
このほかに、重陽の節句の前夜に菊の花の蕾に綿を被せて菊の香りと夜露をしみこませ、その綿で身体を撫でて邪気を祓う「菊の被綿(きせわた)」という風習もあったようです。もっとも庶民にとっては菊の花よりも田畑が大事、この日収穫を祝って栗飯を食べる風習があったようです。
細い糸のような花びらが特徴的な嵯峨菊 |
キクの種類
邪気を払う力があるとされた菊は、桜とともに日本の国花となっています。でも古くから栽培されている「和菊」は、どうも仏花のイメージが強くなってしまって、ガーデニングに取り入れている方は少ないかもしれません。それをカバーするかのように、鉢植え用の「ポットマム」や庭植え向きの「ガーデンマム」といった洋菊が市場にたくさん出回るようになりました。ギボウシがそうであったように、この洋菊も欧米からの逆輸入によって脚光を浴びた植物です。
また厳密にはキクではありませんが、ガーデニングにはキク科アスター属のユウゼンギク、クジャクアスターといったものも人気があります。
小さな花が群がって咲く友禅菊は、キク科アスター属の植物 |
切花は年中市場に出回っていますが、これらは短日処理を行って開花させたものです。観賞菊の展示会では「二本松の菊人形」が有名ですが、その他にも秋になると全国各地で菊の品評会・展示会が盛んに行われています。
懸崖(けんがい)作りや大菊など、その栽培技術には目を見張るものがあります。
機会がありましたら、ぜひ一度ご覧になってみてください。このほかイソギクやノジギクのように、自生している野菊も山野草として愛されています。