トノサマガエルの飼育方法
おっとっと。もちろん、今回も両生類下手の星野の力だけでなく、いつも世話になっている私の飼育の師匠に伝授してもらっていますよー。師匠はこの仲間が一番得意なんだそうで。
<目次>
トノサマガエルの生態と生息地
トノサマガエル 画像提供:ばいかだ
いうまでもなくトノサマガエルは日本の水辺の生き物を代表するカエルです。
水辺に多く、人が近づくとすごいジャンプ力で水の中に逃げ込んでしまうため意外に捕まえたことがあるとか、じっくりと眺めたことがあるとかという方が少ないようです。
だいたい日本全国で「田んぼに住む、大きくてジャンプ力が強い緑色のカエル」といえば「トノサマガエル」と言われると思いますが、実はそれは誤りです。
日本でトノサマガエルと呼ばれてしまうカエルには概ね3種類あります。
1つはトノサマガエルですが、実は関東地方には生息していません。関東地方を除く本州、四国、九州に分布しています。
関東近辺で「トノサマガエル」と呼ばれるのはトウキョウダルマガエルなのです。また中部地方と近畿地方では、ダルマガエル(現在は正式にナゴヤダルマガエル)がトノサマガエルと混同されることが多いようです。
トウキョウダルマガエル 画像提供:ばいかだ
見られる季節こそ異なりますが、どれも姿勢が美しく、飼育下の環境に慣れやすいため比較的飼育しやすい、いいカエルたちです。
ただし、特にトノサマとダルマは生息環境の減少から、各地方で激減していて、たとえば私の住んでいる宮崎県の平野部ではトノサマガエルはほとんど見ることができません。
これはちょっと意外かもしれませんが、宮崎の場合は稲作が「早場米」を作るための早期水稲なので、トノサマガエルの繁殖期である5月下旬くらいには水田に水がほとんどなくなってしまっていることが原因になっているようです。
トノサマガエルの魅力
ナゴヤダルマガエル 画像提供:さくちゃんの生きものだより
さらに、私たちのようにいろいろな生き物に関心を持っていれば、前足をハの字に置いて、長い後ろ足を行儀良く折りたたんだ姿勢の良さ、なんだか妙に人間くさくて、という感じもあるかもしれません。
色にこだわらなければ、アカガエルの仲間たちというのは、そのカエルらしさのすべてを持ち合わせているわけですから、まさに自分の家にカエルがいる、という満足感を得られるでしょう。
また、今回はそういう飼育法ではないのですが、手間を惜しまなければ美しくレイアウトした「アクアテラリウム」で自分の好みの水辺環境を再現した飼育を楽しめるのも魅力といえるのではないでしょうか。
トノサマガエルの飼育方法
さて、それではいよいよ具体的な飼い方に迫ってみましょう。まず、気になるのは「トノサマガエルは飼いやすいのか?」
といういきなりの核心です。
残念ながら私は、自信を持って言えるわけではないのですが、師匠の言葉いわく
「もっとも飼いやすいカエルのグループであろう」と。
ただし、いわゆる本当のトノサマガエルとトウキョウダルマやダルマガエル、そしてもちろんアカガエルには、それぞれ個性があるようで、この中でトノサマガエルは神経質で排他的、活動的であるためもっとも飼育しにくく、逆にダルマガエルは性格もおっとりしていて平和的ということで飼育がしやすいということです。
とにかくなんにしても、少なくともアオガエル系のツリーフロッグよりはずっと飼育しやすいようです。
で、そんな言葉をくれた師匠の飼い方をご紹介です。
トノサマガエルの飼育容器
ジャンプ力が非常に強いグループですから、飼育容器も大きめのものが必要と思ったのですが、そんなことはないようです。そりゃ、最初は飼育環境に慣れていないから驚いてパニックになってジャンプしまくってフタとか壁とかにガンガンぶつかりますが、そんなに彼らもバカではないようです。
飼育環境に慣れて、こちらがおどかしたりしなければ飼育下で跳ね回ることはあまりありません。トノサマガエルなら2-3匹で、45cmのプラケースで十分です。ダルマガエルなら、同じ大きさのプラケで5匹くらいまではいけるようです。
もちろんフタは通気性のいいものを使いますので、そういう意味でもプラケがいいでしょう。また、飼育開始当初にジャンプしてフタに激突することが多いようでしたら、フタにタオルなどを噛ませて衝突時のショックを和らげる工夫はするといいかもしれません。
トノサマガエルの飼育容器:保温・照明
保温や照明は必要ありません。観賞用とインテリアの植物育成用に蛍光灯は設置しておくといいでしょう。トノサマガエルの飼育容器:床材
床材は黒土が最適です。もともと彼らは水田周辺や湿地などにいるわけですから砂利系の底床は好きではありません。ただし、黒土を底床にしてしまうとどろどろの汚い飼育環境になってしまいます。
陸地部分に観葉植物やコケ類を植えておけば泥の飛散などを少しでも防げるかもしれません。
トノサマガエルの飼育容器:レイアウト
水辺に住むカエルですから、陸地と水場があるアクアテラリウムになります。もっとも簡単なのは、黒土を厚く敷いて、大き目のタッパーなどに水をたっぷり入れて水場にする方法でしょう。
この方法は簡便でいいのですが、注意したいのはタッパーの大きさと設置場所です。
どうしても飼育容器の奥行きギリギリの大きさのタッパーを飼育容器の端に設置したくなりますが、こうすると飼育容器の壁とタッパー本体との間に隙間ができてしまい、そこにゴミやらなにやらがたまってしまい非常に不衛生になります。
したがって、それを防ぐために水場であるタッパーは飼育容器の真ん中あたりに埋め込んでしまうのがいいでしょう。
飼育環境 |
また発想の転換で、水槽に水を張って、真ん中に大きめのタッパーを置いて、その中に黒土を入れるとメンテナンスも楽になります。
また管理は大変ですが飼育容器内を、水場と陸地に区切る本格的なアクアテラリウムにすると見ごたえが出てきます。水の管理も大変ですが余裕のある方は挑戦するといいかもしれません。
アカガエルの仲間の場合は、湿った山道をイメージして、土の上に枯れ葉を敷くといいようです。確かに、彼らの体色から考えれば、納得です。
トノサマガエルの飼育の最重要ポイント
さて、このレイアウトですが、ココにトノサマガエルのの飼育の最重要ポイントがあります。それは覆い被さるモノがあることです。
もちろん、シェルターのことなんですが、少しイメージと違います。
もっとも理想的なモノは「草」などの植物です。つまり「草葉の陰」を作ってあげると、その下がお気に入りの場所になって、落ち着き、むやみに飛び跳ねたりしなくなるということです。
見てくれはあまり良くないのですが、小さな「すのこ」などの「棚」みたいなものも良さそうです。
こう考えると、単なる「シェルター」ではなく、決して「ギュウギュウに狭い場所でなく」、上から「光が差し込む」そして「空気が滞留しない」、そんな条件を満たしたシェルターと考えると良いかもしれません。
棚の下はこうなっている |
トノサマガエルを飼うときの餌
特別に工夫するようなことや注意することはありません。コオロギを与えればいいでしょう。カルシウム不足にならないように、栄養添加剤をまぶすのも大切ですが、ダンゴムシやワラジムシなどをときどき与えてみましょう。またイモムシ(チョウやガの幼虫)は他の両爬同様に喜ばれるエサであることは言うまでもないでしょう。ちなみにいわゆる「毛虫」は与えない方が良いようです。
ただし、水場が広く多湿環境ですので食べ残したコオロギやその死体などは発見しだい速やかに取り除きましょう。
トノサマガエル飼育の日常の管理
ある程度、飼育環境が落ち着いているならば、日常の世話は給餌と掃除くらいです。給餌間隔は3日に1回くらいでいいでしょう。特に、春から夏にかけては食べるだけ食べさせても構いません。
ただしアカガエルは、初春に活動をした後に、初夏の間は夏眠ではないのですが、水底に潜って活動を停止する時期がありますので、この時はそっとしておきましょう。
土を使うので、掃除は大変ですが、とにかくタッパーの水はこまめに取り替えてあげるべきです。
トノサマガエルはハンドリング飼育も可能?
とにかく、にわかには考えにくいのですが、事実なんだから仕方ないです。特にダルマはハンドリング可能、というか、それどころか「膝の上に乗せて、一緒にテレビを観る」ことが可能であり、しかも「サッカーの試合の中継が好き」だとか...
いや、私の師匠が言うのですから、間違いのないことなんでしょう。
とにかく、ダルマやトウキョウダルマは「馴れる」ということです。
そのためには、まずエサの与え方を工夫することでしょう。
とりあえず、ピンセットから餌を食うようにして、それから人間の手を恐れないようにするということです。
ただし、相手は両生類ですから、水が必須です。くれぐれも「座敷ガエル」にはならない、ということを覚えておいてください。干からびちゃいますから。
また、アマガエルの飼い方で紹介した「牛乳パックを利用したカエルの洗い方」も、もちろんトノサマガエルの仲間たちには有効です。
トノサマガエルの雌雄の判別
繁殖期のトノサマガエルは、オスが全身に金色の婚姻色が出ることが多く、区別しやすいですが、他のアカガエルの仲間は、それほど顕著ではないので、体色による判別は難しいと言えます。ただし、何個体かを見比べればわかるのですが、明らかにメスはぽっちゃりとしていますし、オスは頭部が大きくメスとは体型が異なります。
しかし、なんと言っても最大の判別点は「鳴くのはオス、鳴かないのはメス」でしょう。
この仲間は飼育下でもさかんに鳴くようですから、簡単に判別できるようです。
トノサマガエルの寿命
さて、最後に寿命について触れておきましょう。一般にこの仲間は、飼育下で5-6年は生き永らえる。またうまく冬眠をさせることによって10年くらいは飼育下で生きるようです。ただし、ややアカガエルは弱い面があるようで、短命に終わってしまうことが多いようです。
ニホンアカガエル |
もちろん、彼らは自然の生態系の中では中間消費者でありますから、多くの天敵に囲まれていて、それら天敵生物のためのエサになることも役割の一つです。
したがって、自然での彼らの寿命は、飼育下でのそれと比べ著しく短いと考えられます。
そう考えれば、縁あって我々の飼育容器内に入れられた、トノサマガエルたちは、ある意味、幸せなのかもしれません。
ちょっとした注意点と、何よりも彼らの視線に立った飼育を心がければ、彼らの幸せを私たちは作って、それを共に楽しむことができるのです。
もっともカエルらしい、カエルであるトノサマガエルとその仲間たち。
せっかく飼育をするのですから、少しでも長く一緒にいられる時間を作ってあげられるように、上手に飼育していきましょう!
【参考サイト】
両生類図鑑「びっきぃとやまどじょう」
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