癒しの旅/東京の美食旅

人には教えたくない!旨い店~和食編1

6年もの歳月をかけて作りあげたという古民家は、ご主人のこだわりがあちこちに感じられる独特の居心地良さ。出汁から水に至るまで、料理への情熱も並々ならぬものがあります。高尾の隠れ家、『ろくざん亭』へ。

執筆者:岩佐 十良

ここぞというときに使いたいとっておきの店、毎日でも入り浸りたい寛ぎの店……。
自分のお気に入りの店との付き合い方はさまざまだと思いますが、今日ご紹介するのはどちらかと言えば後者の方。しかも、それを実現可能にしてくれる空間(全室が個室!)とコストパフォーマンス(炭火焼肉のコースが3,150円~!?)を誇る隠れ家です。
都心からは程よく離れた静かな古民家で、喧騒を忘れて穏やかなひとときを。

隠れ家レストラン激戦区の
本命ともいっていい店です


ろくざん亭 外観
甲州街道から細い路地を入っていくと……。
 甲州街道を八王子から高尾方面に進み、「こんなところに店があるの?」と思う細い路地を入ると、突然現れる古民家──。

 周辺には、郊外の隠れ家レストランの先駆けともいえる『うかい亭』をはじめ、『美ささ苑』『鶯啼庵(おうていあん)』など数々の“隠れ家”が点在。そんな激戦区で、コストパフォーマンスの点でずば抜けているのがこの『ろくざん亭』だ。

 もとは平凡なジンギスカン料理の店だったというが、2代目主人の加藤雅己さんが、ある日突然、見知らぬデザイナーからの売り込みを受け、「おもしろいじゃないか」と建築案を即決。6年もの歳月をかけて現在の建物を造ってしまった。

夢は膨らみ、改築総工費は1億6000万円!?
独特の居心地良さがただよう空間


ろくざん亭 内観
玄関に吊り下がる大きなランプは造形作家の作。
 「5軒の古民家から古材を集めたり、造型作家に照明を作ってもらったり。あれもこれも夢が膨らみ、総工費は1億6000万円。すっかり予算オーバーです(笑)」

 完成した建物は、いわゆる民芸調とはひと味違う独特の雰囲気。食事はすべて個室でいただくことができる。それにしても、かけすぎた建築費を料理価格に転嫁しようとは思わなかったのだろうか。

「苦しかったですが、正直に商売すれば必ずお客さんが増えると思って、頑張ってきました。それにうちで使っているのは、そんなに高い肉でもないですから(笑)」


『ろくざん亭』の“正直さ”は、料金もさることながら、その素材選びにもしっかりと現れています。次のページへどうぞ。
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