カニ、南蛮エビ(甘エビ)、ノドグロ……。
「佐渡の魚は何でも美味い」そのウワサの真実は?

炭火でじっくり時間をかけて焼く“浜焼”は冷蔵庫のなかった時代に考えられた保存食。
そんな浜焼の店が5軒も残る出雲崎と北前船が造られていた街、佐渡・宿根木を訪ねる旅。
美味い魚と旨い酒、そして昔ながらの街並に出会う、ぶらりひとり旅へ。

前編は、対馬暖流の恵み豊かな、港町・出雲崎編をお送りします。

新潟県民は言う。
「佐渡の魚はなんでも美味い!」


出雲崎港
出雲崎漁港は底曳き網漁中心。早朝漁に出て昼過ぎに帰港、午後のセリで競り落とされた魚介は、翌朝、築地や新潟市中央卸売市場でさらにセリにかけられ小売店に並ぶ。
 ガイドが発行する雑誌『自遊人』の編集部が、新潟に移転してからもう1年以上になる。

 移転のあとに現地採用した人間や、親しくなる人ほぼ全員が言うことがある。
それが、「米が美味い」「酒が旨い」、そして「魚も美味い」。そして決まって「佐渡の魚は天下一品」と続くのである。

 東京出身の私にとって、佐渡の魚と言えばマグロ。夏、佐渡の定置網で獲れるホンマグロは、冬の大間(青森)や戸井(北海道)に次ぐ最上級品だ。あとはベニズワイガニ。ただし“ベニはズワイと比べて味が落ちる”から興味がなかった。

 でも地元の人たちが口々に言うのはマグロでもカニのことでもない。新潟県民に言わせると「新潟の魚は何でも美味しい」「とくに佐渡の魚は美味しい」ということになる。

 まぁ、一種の郷土愛みたいなものなのだろうが、果たしてそんなに美味いのだろうか。今回は、新潟県見附市出身の新人・八木(新人といっても中途だからけっこう歳だけど)をガイドに佐渡へ渡ることにした。

魚だけでなく、街並歩きも楽しい
天領・出雲崎


出雲崎港
名産はサザエやカレイ、タイなど。サザエは稚貝を放流しているが、揚がる魚はすべて天然。ノドグロ、アラなども揚がる。
「まず佐渡に渡る前に、出雲崎漁港に寄りたいんです」

 新人・八木が言う。

「なんで?」と聞くと、「佐渡へ渡らなくても魚種が豊富であることを証明したいんで」

 編集部から車を走らせること約1時間30分、出雲崎に到着したのは朝10時。これから14時頃にかけて船が戻ってきて、選別をしたのち、15時30分からセリが始まるという。

 出雲崎は佐渡金山の陸揚げ港で天領だった。北前船の寄港地としても栄え、江戸後期には僧侶であり歌人・書家として親しまれた良寛を輩出している。

現在でも繁栄の名残は色濃く、旧北国街道沿いには切妻屋根の家々が約3.5kmにわたって建ち並ぶ。

 そんな町をぶらり歩いていくと港が現れる。時刻はちょうど14時。船が一艘、また一艘、戻ってくる。

荷捌き場ではマガレイや南蛮エビ(甘エビ)、アジ、サバ、タチウオ、タイ、タコにイカ……と30種類以上の魚がトロ箱に入れられ、セリを待っている。

小さな港から想像もつかないほど、豊富な魚種を誇る出雲崎。
四季折々の美味い魚を出す料理屋を次のページでご紹介します。