世界遺産/未来の世界遺産

未来の世界遺産7 死海でプカプカ浮遊体験(6ページ目)

「絶対に体が沈まない」という異次元体験ができると噂の死海。はたしてその真相は? 世界遺産ではないけれどもすばらしい場所を紹介するシリーズ「未来の世界遺産」。第7弾は地上最低所の陸地、中東の死海。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

死海の塩の秘密

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結晶する塩
岩に結晶する塩。舐めるともちろんしょっぱいが、ミネラル分を非常に多く含んでおり、とても複雑な苦味を感じる。©牧哲雄


死海は地上でもっとも低い場所と言われており、海抜はなんとマイナス約400m。海水面から400mも下にあるわけだ。当然死海から海へと流れ出る川はなく、ヨルダン川など死海に注ぐ川の水はそのまま死海にたまっていく。ではなぜ死海の水位は上がらないのか?

答えはそれ以上のペースで蒸発してしまうから。死海の周辺は礫砂漠が広がる乾燥地帯。水分は非常なペースで蒸発してしまう。もともと海底だった土壌だけに川の水に含まれる塩分も多く、おまけに温泉によって様々なミネラル分や塩分が一緒に湖に入る。これらの成分は湖から出ていくことができずに蓄積される。新たに水が流入してもその分蒸発してしまい、成分だけがどんどん濃くなり続けていく。

こうして高まった塩分濃度は海の3%に対して25~30%前後。1リットルの水になんと250~300gもの塩分が溶け込んでいることになる。人は15~20%で浮くことができると言われているから浮きまくるのも当然だ。

浮くことはできるが生物が暮らすことはほとんどできず、魚もいるにはいるが川との合流地点や湧水地のみ。おかげで「死海 Dead Sea」という名がつくことになった。

この死海だが、近年農業による取水等で流入する水の量が減り、水位は下がり続けているという。将来死海が消滅する可能性さえあるようで、紅海からの海水流入など様々な方策が検討されているという。世界中の子供たちに驚きを与える世界にふたつとない湖、死海。いつまでもこの生きている伝説が保たれることを願いたい。

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