26年来の悲願、『落下の王国』

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ヒマラヤ山脈、中国とインドの国境付近で撮影された1シーン。©2006 Googly Films, LLC. ALL Rights Reserved.
もともとのアイデアが浮かんだのはなんと26年前。17年ほど前には子供との会話を通して展開する物語を構想した。CMで世界中を旅するたびに美しいロケーションをハントしつつ、『落下の王国』のアイデアを少しずつ広げていった。

こうして「本当に撮りたい映画を撮る」「CGは使わない」という信念のもと、自己資金で撮影がはじまった。世界中でCM撮影の傍らで撮影を続け、結局ロケ地は本人さえ忘れてしまった場所を含めて世界24か国以上、4年以上の歳月を費やした。

「物語」の力

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この色彩。これでCG不使用とは。©2006 Googly Films, LLC. ALL Rights Reserved.
全編続くのがスタントマン・ロイと少女アレクサンドリアの会話。ロイはアレクサンドリアを思いのままに操ろうと、物語を作って語り聞かせていく。無垢なアレクサンドリアは話を心待ちにするようになるが、次第に物語に影響を与えるようになっていく。

ロイの世界を反映していた世界はやがてアレクサンドリアの影響を受けて広がり、ふたりの人生は深く交錯し、人生という現実の物語さえも書き換えていく。

実はこの映画自体、多くの人々によって書き換えられてきた物語。ターセムはあまりに辛かった失恋経験から失恋のエピソードを挿入。アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーのセリフの勘違いはそのまま映画に取り入れられたし、撮影が終わるまで彼女はロイ役のリー・ペイスが本当に歩けないと思っていたのだが、おかげでロイに対するかわいらしいいたわりが映画全編を彩ることになる。

人生とは何か、世界とは何か——ロイとアレクサンドリアの一見たわいなく見える会話に込められたメッセージは、あまりに無垢で、純粋で、深い。