世界遺産の楽しみ方は、実際にそこを訪ねたり調べたりするばかりじゃない! 世界遺産特有の地形や産業を活かして生産された食べ物や飲み物を味わい、その奥深さを全身で感じとることだってできるのだ!!

新シリーズ「世界遺産を味わう」では、世界遺産に関係する飲食物を日本で味わう、あるいは世界遺産に行ってしか楽しめない飲食物を現地で味わうという新しい世界遺産へのアプローチを提案する。第1回は「王様のワイン、ワインの王様」と称されるトカイ・ワイン。

トカイ村のブドウ畑とワイナリー
トカイ山の麓に広がるブドウ畑と、300年以上の歴史を誇るワイナリー。ワイン自体は1,000年以上前から生産されていた。©ハンガリー政府観光局
■今回のお楽しみDATA
飲 食 物:トカイ・ワイン
概  要:世界遺産で生産される至高の貴腐ワイン
世界遺産:トカイ・ワイン産地の歴史的文化的景観
国と基準:ハンガリー、2002年、文化遺産(iii)(v)

<記事index>

王様のワイン、ワインの王様

フランス料理の起源といわれるのは17~18世紀、ルイ14世、ルイ15世の宮廷料理。世界中の贅を集めた豪華絢爛たる料理の中に、ルイ14世をひときわ驚かせたワインがあった。

その甘味は蜂蜜のように濃厚で、ルイ14世の心をたちまちとろかせたという。そのとき彼がいった言葉が、「これこそ王様のワインにしてワインの王様なり」。同じワインはオーストリアの女帝マリア・テレジアやローマ教皇ベネティクト14世、ロシア皇帝ピョートル1世、フランス王ナポレオン3世をはじめ、数々の王や貴族たちを虜にしたという。

トカイ村のブドウ畑
整然と並んだブドウ。生産されているのは主にフルミントやハールシュレヴェルーといった品種で、いまだ手作業で育てられている。©ハンガリー政府観光局
そのワイン、実は現在世界遺産に登録されているハンガリーはトカイ村で作られたもので、トカイ・ワインという。普通のワインと違い、ある種のカビが繁殖して腐ったようにシワくちゃになったブドウを用いるのだが、このブドウ、カビによって水分が蒸発し、糖度や香りが極限まで高められている。

こうして作られたワインは金色に輝き、むせるほどの香りを放ち、味わいはとろけるように甘くて濃厚。それゆえ貴く腐ったワイン=貴腐(きふ)ワインと呼ばれている。世界三大貴腐ワインといわれるのがドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、フランスのソーテルヌ、そしてハンガリーのトカイなのだ。