世界遺産/世界遺産豆知識

世界遺産を味わう1 王様のワイン トカイ(2ページ目)

訪ねたり調べたりばかりが世界遺産じゃない! 世界遺産関連の食べ物や飲み物を味わい、世界遺産の奥深さを全身で感じるシリーズ「世界遺産を味わう」。第1回はルイ14世が「王様のワイン」と称えたトカイ・ワイン。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

「王の中の王」トカイ・エッセンシア

ワイン・セラー
セプシ・イシュトヴァーン氏のワイン・セラー。300年以上前から厳しい品質管理がなされており、貴腐ワインは木製の樽で2年以上熟成させることが義務づけられている。©ハンガリー政府観光局
ルイ14世が飲んだトカイ・ワインは、「トカイの王様」とも呼ばれる「トカイ・エッセンシア」だといわれている。いってみれば「王の中の王」。

それだけに非常に高価なのだが、私も何度か飲んだことがある。先日飲んだそのワインの名前は「トカイ・エッセンシア キライウドゥヴァル」。セプシ・イシュトヴァーンという世界のワイン・コンクールの常連が作る至高の逸品だ。

ボトルからグラスに注いだだけで立ち込める甘い香り。液体は黄~金色に輝き、マリア・テレジアが「金が入っているのではないか」とその成分を分析させたというのもうなずける。

味わってみるとこれがもう、本当に蜂蜜のような甘さ。とても濃いのだけれど砂糖のような尖った感じもベタつきもなく、しっかり残っているブドウの酸味が後味をキュッと引き締める。日向ぼっこのような太陽の香りがフワッと残るともうなんというか……。

ただただエッセンシアに身を任せていると、太陽の香りはトカイの畑の香り、大地の香りを呼び起こし、やがて想いはそれを作る人々に飛び、やがてルイ14世やマリア・テレジアに至る。

世界遺産のその畑で中世そのままの製法で作られるトカイ・エッセンシア。「トカイ・ワイン産地の歴史的文化的景観」の文化と自然環境なくしてこのワインはなく、このワインの味わいにはそのままこの世界遺産のすべてが詰め込まれている。その味を知ることは、この世界遺産を知ること。おそらくその場を訪ねる以上に雄弁に。

これが本シリーズ「世界遺産を味わう!」のコンセプトだ。世界遺産ファンのみなさんにも、ぜひこのワインを全身で感じていただきたい。

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