モヘンジョダロのライフスタイル
ガートのある沐浴場。宗教施設ではないかと考えられている。現在でもヒンドゥー教の村には沐浴場がある ©牧哲雄
まず、牛を中心に印章にはゾウやサイ、トラ、ヒツジなどの動物や、ユニコーンのような架空の動物まで、様々な生物が描かれている。農耕の様子なども描かれていることから、農業や牧畜が盛んに行われていたようだ。
金、銀、銅、水晶、瑪瑙などの宝石も発掘されており、また鏡や櫛なども見つかっていることから、当時の人々が清潔なだけでなく、かなりオシャレだったことが推測できる。
また、女性の身体や男性器・女性器を模したものも出土しており、ヒンドゥー教のシヴァ・リンガとヨーニ(ヒンドゥー教の寺院では男性器リンガと女性器ヨーニが交接した彫刻がしばしば見られ、世界が神の子宮内にあることを示した)につながる思想があったこともわかる。
時と場所を越える人間の暮らし
ロバに乗って商売に出かける地元の人たち。モヘンジョダロ周辺の村では、水牛、ロバ、ラクダなどの動物がいまだに大活躍している
こうして、子供を産み命をつなげる人間の身体や性器、あるいは動物や大地や炎や雷といったどうにもならない大自然の力、森羅万象に神を見て、沐浴によって身体を清め、神々に健康と平和の祈りを捧げた。
それは現在も変わらない人間の姿だ。
モヘンジョダロ周辺に生きる農村の人々は水牛で田を耕し、ロバで木の枝を運び、その枝でチャイを沸かし、神に祈り、4,000年前と変わらぬ姿で生きている。いくら彼らが貧しくとも、彼らは笑顔に満ち、私を家へと迎え入れ、チャイをふるまってくれた。
私たちだって変わらない。彼らと同じように母親から産まれ、両親によって育てられ、病気や災害という自然の驚異にさらされ、誰かを愛し、やがて年老い、必ず死んでいく……