現代以上に整備された都市空間、モヘンジョダロ
井戸。もともとモヘンジョダロは土に埋もれていた遺跡で、かつて地表はもっと上にあった。後世の人々は昔から伝わる井戸を利用し、埋もれそうになるとレンガを追加してきたために、発掘すると塔のようになってしまった
モヘンジョダロに行き、ひと目見て驚いた。あまりに美しく整備された街並み。一つひとつのレンガの質の高さ、美しさ……
全体は網目状にキッチリと整備され、道路はタイルで覆われて歩きやすく、家々は道路と水路でつながれており、下水道が完備されていて、家には井戸はもちろん浴室だって備えられている。
モヘンジョダロ周辺の田舎町の家々よりもはるかに機能的で美しい。しかも、モヘンジョダロからは動物や神像が刻まれた数多くのインダス式印章(ハンコ)が出土しているのだが、そこには街で見かけたあの牛2頭を並べた農機具の意匠さえある。
なんか、いまより進んでるじゃないか!
モヘンジョダロの高度な都市システム
タイルで覆われた道路と下水道。下水道はレンガで隙間なく覆われており、防水加工がなされ、ゴミが詰まらないよう工夫がなされている ©牧哲雄
ヨーロッパ諸都市に下水道が整備されたのは、パリが18世紀半ば、ロンドンが19世紀後半。太陽王ルイ14世の有名なエピソードで、彼がパリの街を離れヴェルサイユ宮殿を建てたのは、街がし尿の臭いに満ち溢れていたからだ、というものがある。当時は下水施設もなく、し尿は窓から街にそのまま捨てられた。それが2~3世紀前のヨーロッパの姿なのだ。
しかもモヘンジョダロでは、一度し尿が下水を通して集められ、沈殿・微生物による自然処理されたのちに、上の液体だけを流すようなシステムになっていた。そして沈殿したものを肥料として使う。おかげでヨーロッパ諸都市のように街や川が汚染されることもなく、し尿を環境に戻すことで野菜や穀物を栽培した土地は再生され、有機農法を実現した。