蔵元で修行中の写真は貴重な1枚。 |
ところが、蔵元での酒造りになると、またまたイメージは一変。作業服に長靴をはき、40キロのお米を扱うとか。執筆業のほか、全国各地でのセミナーなどをこなしながら、蔵元で実際に酒造りに携わることは並大抵の行動力ではありません。きき酒師という仕事の魅力、またそのパワーの源とは?
好きな「テーマ」を強みにしたい
ガイド:ラジオレポーターを経て、女性週刊誌の記者として仕事に邁進していた葉石さん。「きき酒師」をめざしたきっかけは、何だったのでしょうか?葉石さん:女性週刊誌の記者として美容、ファッション、旅など多岐にわたるテーマを担当してきましたが、これといって自分の専門分野もないことに気づきました。それで、もともと好きだったお酒を専門にしたい、と思いました。特にワインが好きだったのですが、ワインではソムリエの田崎真也さんが活躍されていて、ワインでは一番になれない、と。それで、日本酒のソムリエ資格、きき酒師の資格を取得しました。
ガイド:きき酒師の資格を取得されたのは、女性週刊誌の記者として仕事をされていたときですか?
葉石さん:そうです。31,2歳の頃でした。その資格を知ったのは、雑誌の小さなコラムがきっかけだったと思います。
資格を活かすコツはニーズを掴むこと
ガイド:きき酒師の資格を取得されてから、どのような活動をされたのですか?葉石さん:すぐに「きき酒師」として活動していたわけではありません。名刺に「きき酒師」といれ、日本酒について知人などに話すうちに本を出すことになって。一冊出版できれば、それでカタチになるかな、と。
ガイド:それからも次々と書籍を出版されました。また、新聞や雑誌、ウェブでも連載されています。葉石さんのように資格を活かすためためのポイントは何でしょうか?
葉石さん:ニーズを掴むことだと思います。そして自分で仕事にする発想が大切です。そのためには行動力が必要です。もちろん、それには失敗はつきものですが「これで生きていく」と覚悟を決めて臨めば失敗も糧となります。
きき酒師に向く人は?
ガイド:きき酒師に向く人はどんな人でしょうか?葉石さん:飲むことが好きな人。そして向上心のある人。次々と新しい日本酒がでてきます。資格をとってからも、学ぶことがたくさんあります。
ガイド:なるほど。資格を取得して終わり、でなく、その後も学び続け新しい情報をキャッチすることがニーズを掴む、ということにつながるのですね。ところで、実際に蔵元で酒造りをされているとか?
葉石さん:日本酒について学ぶうちに、机上だけでなく実際の目で確かめたい、と昨年から実際に蔵元で酒造りに携わるようになりました。今は、京都などの蔵元で下働きからやらせてもらっています。実際にやってみると理論や知識がより深く理解できます。
例えば「生もと仕込」とは昔ながらの手法で、酒母を造る際に、蒸し米、麹、水を半切りという桶に入れ、米を櫂棒で摺りつぶす「山卸し」という作業を行い、天然の乳酸菌を増殖させる方法です。この言葉1つをとっても、実際に自分の目で、その一連の作業、微生物の働きを見てはじめて身につくものだと実感しています。
それに、爪を短く切って、髪をひっ詰めて、寒い蔵の中で行う酒造りを続ける大変さを実感します。実際に日本酒を造るところから携わることで、造り手の気持ちに近づけるのが嬉しく、もっともっと学びたいと思うようになりました。