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競争のない市場を創出する企業戦略 2つのブルー・オーシャン戦略!(2ページ目)

ブルー・オーシャン戦略をご存知ですか?2004年の米国ビジネス界で評判を呼んだ、企業の生き残り戦略です。競争のない新市場の創出と、産業、教育の再生、犯罪激減のヒントまでもがここにあります!

竹村 和浩

執筆者:竹村 和浩

ビジネス英会話ガイド

ブルー・オーシャン戦略
Blue Ocean Strategy By Chan Kim & Renee Mauborgne

犯罪を激減させたニューヨーク市の例

かつてニューヨークの地下鉄といえば、「動く下水道」と呼ばれるほど、汚れて荒廃し、また、危険な場所という印象がありました。しかし、今では見違えるように変化しています。殺人などの重大犯罪が、ここ数年で激減しているのです。勿論テロの警戒の影響も考慮されるべきですが、1994年にニューヨーク市警の市警本部長に任命された、ブラットン氏は、30年間増加しつづけてきたこのニューヨーク市の犯罪の減少に取り組むよう指示され、任命されたわけです。ところが、その難題をなんと、わずか2年!!で、それも、特別な予算の増加もなしに、ニューヨーク市を全米で最も安全な街に変えるという偉業を成し遂げてしまったのです。


ゼロ・トレランスというブルー・オーシャン

ここで、ブラットン氏が、取った戦略は、ゼロ・トレランス、別名、「破れ窓理論」と呼ばれる理論に基づくブルー・オーシャン戦略でした。

破れ窓理論というのは、ある建物の窓が一枚割られた場合、それをそのまま放置すれば、必ず、2枚目が割られる。さらに放置すれば、3枚目、4枚目、最後には、その建物すべての窓が割られてしまうというものです。そこで、1枚目が割られた時点で、すぐに修復し、犯人を厳しく罰すれば、その後建物の窓が割られることはなくなるという理論のことです。

つまり、犯罪などは、軽犯罪からしらみつぶしに摘発し、厳しく取り締まれば、重大犯罪へと拡大せず、むしろ軽犯罪どころか重大犯罪をも減少させ、未然に防ぐことに繋がるという考え方です。

そのため、本書には詳しく書かれていませんが、彼は、この「破れ窓理論」からくる、ゼロ・トレランス"Zero-tolerance"(文字通り「寛容さなし」)を実行に移します。まずは地下鉄の落書きをすべて消し、落書きの現行犯、およびニューヨークの地下鉄の悩みの種であった、無賃乗車犯も捕まえると全員、手錠を掛けて、改札口に数珠繋ぎにするという取り締まり方法に出ます。すると、驚いたことに、まず落書き無賃乗車がなくなったのは、いうまでもなく、殺人や、窃盗などの重大犯罪が、半数近くに一挙に激減したのです。それにより、ニューヨーク全体の犯罪発生率が大幅に減少していきました。

実は、このゼロ・トレランス方式は、もとは日本の警察システム、特に交番制度などが、もともとのモデルであったといわれています。軽犯罪を常日頃から交番のある小さな地域単位で注意することで治安を維持するやり方です。
また、「破れ窓理論」も日本の学校教育制度が手本になっているといわれています。現在アメリカの公立高校では、この「破れ窓理論」とゼロ・トレランスが導入され、大きな成功を収めているといいます。生徒は、服装の乱れもなく、先生の指示に従わない生徒はほとんどおらず、また、授業中に授業を妨害する生徒もほぼ皆無であるといいます。また、アメリカの子どもたちは、勉学に眼を輝かせて学ぶ意欲にあふれているといいます。


アメリカの教育も再生した、ゼロ・トレランス!

このベースには、日本の80年代まであった、校則をきちんと明記し、それを生徒手帳として携行し、服装などの細かい点までも逐一遵守させるという生徒指導のやり方が、モデルとして採用されているといいます。
アメリカの場合、この制度をさらに進化させ、個々の先生の指導技術に任せるのではなく、学校のシステムとして機能させ、もし、一つでも違反した場合は、正にゼロ・トレランスで、違反回数によって、自動的に懲戒段階があがり、最後には放校されるという厳しいシステムとして、「価値革新」導入しているのです。
その結果、学校は安全で安心して学べる場所となり学生のロッカーには傷一つ付いていないといいます。さらに学力面でも、日本の受験システムをモデルとした、試験という動機付けを導入し、全米での英語・数学の学力試験を小学3年から、中学3年まで、毎年実施するというシステムで、学力の向上にも成功を収めているのです。日本の「価値」を見習い、「再創造」することによって、見事にアメリカは、教育の再生に成功しているのです。

最近、注目を集める若手バイオリニスト・ヒラリー・ハーンの登場と活躍もその教育の影響の一つと見ることもできます。

振り返って日本はどうかと観れば、まさにその逆をひた走っているといわざるを得ません。(日本は、80年代からアメリカの教育システムをモデルとした改革を行ってきています。)

この「ブルー・オーシャン戦略」が日本に示唆するのは、過去にとらわれない、柔軟な思考と視点を持ち、さらに実行する勇気であるのかもしれません。

本来の自分が持っている文化や伝統としての「価値」をさらに「革新」すれば、きっと日本にしかできない「ブルー・オーシャン」の創出が技術、教育両面で、きっと可能なはずだ!と励まされた一冊でした。書かれている英文も書く上で参考になる平易で流麗な文体です。是非、英文で読み、今後の企業戦略や、ビジネス戦略、またビジネス英語の語彙補強に是非、活用なさってみて下さい!

ガイドのお薦めの一冊です。

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