韓国5大姓のローマ字表記をチェック!
アンニョンハセヨ? 韓国人の苗字のローマ字表記については、これまでいろんな人から何回も質問をされました。例えば、「이(イ/李)」さんは、韓国語で発音するときは‘イ(イー)’ですが、表記は‘LEE(リー)になる習慣があります。
日本語の場合、山田さんは「Yamada」さん、鈴木さんは「Suzuki」さんと、私たちにとってはそのままで、ローマ字にしたとたん大きく変わる、ということはそうありませんものね(少し変わると言えば、佐藤さんを「Sato(サト?)」さんと書くことがある、ということくらいでしょうか)
その他も、「박(パク/朴)」さんは、「Park」さんと書く人が多いですし、韓国人の苗字のローマ字表記に関しては、「なぜ?」と思うことが多いですよね。その理由は、「以前からの慣習」と「ローマ字表記法」が2つの大きな理由となります。これは、突き詰めていくと、韓国人同士でも大論争を開始するようなことなのですが、ここでは細かいことは置いておいて、「こう考えておけば良い」というような内容についてご紹介したいと思います。韓国人5大姓を例に、早速見てみましょう!
韓国人の名前、5大姓の英語表記(ローマ字表記)とは?
・金 김 Kim
・李 이 Lee
・朴 박 Park
・崔 최 Choi
・鄭 정 Jeong, Jung, Chungなど
この名字だけで人口の半数を占めるというから驚きです。そして気になるのが、そのローマ字表記ですが、まず、これは「決まり」というよりは、「そう書くのが一般的になっている」というふうに捉えてください。
この中で、「김(金/キム)」さんが、「Kim」さんとなるのが最も納得が行くでしょうか。その下を見ると、「이(李/イ)」さんが「Lee」さんとなっていますね。これは、2つの理由が考えられます。まず、「李」という姓は、元々朝鮮半島では「리(リ)」と表記され、話されていました。その後、韓国が「頭音法則」というものを採用し、「ㄹ」で始まる言葉を「ㅇ」にする法則を立てたため、「이」になった訳ですが(北朝鮮では「李」さんは、「리」さんです)、その名残が若干ある、ということ……。
そして、それよりも大きな理由は、ローマ字表記をする際に、欧米人でも馴染みのある名字にすると分かりやすいという考え方から、「Lee」と名乗るようになった、というのがどうやら理由のようです。ブルース・リー(Bruce Lee)、ロバート・E・リー(Robert Edward Lee)なるほど!
すると、「박(朴)」さんが「Park」さんになっているのも、分かる気がしませんか? 「박(朴)」さんという名字を持つ人が英語で自己紹介をするとき、韓国語的に「パッ」と言うよりは、「Park(パーク)」という方が、欧米人には馴染みやすかったのでしょう。これは、「문(文/ムン)」さんが、ローマ字表記では「Moon(ムーン)」と書く人が多いのを見ても、うなずけます。言うまでもなく、「park」は公園、「moon」は月という英単語ですものね。
じゃあ、「최(崔/チェ、チョェ)」さんは、どうして「Choi」さんなの!? 次ページで一緒に考えてみましょう。
韓国人の名前の英語表記……최(崔)さんはなぜChoiさん?
「李, Lee」や「朴, Park」が欧米人に馴染みやすい表記だとしたら、「최(崔/チェ、チョェ)」さんは、どうして「Choi」さんなの!? と思いますよね。「Choi」だと、それが「최(崔)」という姓を指すということを知らなければ、必ずしや「チョイ」さんと読んでしまうでしょう。なぜか……。これは、「최」というハングルを分解すると、「ㅊ」→「ch」、「ㅗ」→「o」、「ㅣ」→「i」となり、それを繋げて使い出したのが定着した……と考えらると思います。
私たち日本語話者の感覚からすると、「Che(チェ)」でも良いのではないだろうか!? と思わなくもないですが、「e(エ)」の発音は、韓国語で「ㅔ(エ)」、もしくは「ㅐ(エ)」になります。韓国人にとって、「ㅚ」と「ㅔ(ㅐ)」の発音は、雲泥の差があるのですよ。
ちなみに、当校の「최(崔)」先生に、「チョイさん、と言われたりして困ったり嫌だったりしたことはありませんか?」と聞いてみたところ、「仕方ないですよね(笑)、そんな時は、実際は韓国語では‘チョェ’と読むんですよ、とさりげなく言っています」とのことでした。また、「どうして‘C(シー),H(エッチ),O(オー),I(アイ)’と書くのかご存じですか?」 との問いかけに対しては、「中学校の英語の時間に先生から聞いて、そのまま使っていたので考えたことありませんでした」とのこと。皆さんの周辺の「최(崔)」さんに聞いてみたら、なんと答えるでしょうか。人それぞれで面白そうですね。
それでは、5大姓最後の「정(鄭)」さんを見てみましょう! いろいろあるのはどうして!? →こちら!
韓国人の名前の「ローマ字表記法」とは?
さて、5大姓最後の「정(鄭)」さん。私がこれまで会った「정(鄭)」さんの名刺には、「Jeong」と書いてあったり、「Jung」と書いてあったり、「Chung」と書いてあったりと様々でした。韓国の「国立国語研究院」が2001年に発表した「国語(韓国語)のローマ字表記法」を見てみましょう。そこには、それぞれのハングルは、ローマ字で以下のように表記するというガイドラインがあります。
韓国の国立国語院発表の「ローマ字表記法」 |
この表を見ながら「정(鄭)」を分解すると、「ㅈ」→「j 」、「ㅓ」→「eo」、「ㅇ」→「ng」で、繋げると「Jeong」となるわけですが、人によっては「eo」と書くと「エオ」と言われてしまい違和感があったりして、その部分を「u」にし、「Jung」と名乗ったりもするのでしょう。ちなみに、私たち日本語話者の感覚ですと、その「u」を「o」にすれば近いのでは!? と思わなくもないのですが、韓国人にとっての「o」は、「ㅗ」の音そのもので、これまた「ㅓ」とは雲泥の差なのです(!)。だから、「ㅓ」を「o」とローマ字表記で表してしまうのは、許せない(笑)ようですね。
話がそれましたが、「Jeong」や「Jung」ですと、「ジョン」さんなどと言われてしまい、違和感がある人は、「J」を「Ch」に換えて「チョン」さんと言われるよう表記したりもしているようです。そう、冒頭でも言いましたが、これは「決まり」というより、「一般的にそう書く人が多い、そう書かれてきた」という「慣習」を優先させる考え方が一般的なので、自分が「こうしたい」と思えば、それで通ってしまう、通せるという部分があります。
また、先ほど紹介した「ローマ字表記法」は、ここに至るまでも幾度も改訂されており、今後も改訂されることでしょう。言葉というのは、一応、国がガイドラインを定めたものがあっても、何万人という人が使うものですから、すべての人が同じように使い、すべての人が、そのガイドラインをスタンダードだと思っているとは限りません。
その中でも韓国語は移り変わりが早く、ハングル文字という特殊性から、いろんな表記、考え方が通りがちです。誰かが「これはこうだ」と言っても、そう思わない人ももちろんいます。しかし、私はいつもそんな議論を心から楽しんでいます。自身の韓国語の教室で、先生達と、あれが正しいか? どうしてこうなったか? という議論を交わすのが、日々の楽しみです。皆さんも、そんな韓国語、韓国語の歴史を是非楽しんでみてください。
韓国人の名前の英表記については、話し出すと止まりません! 今後も、韓国語を学び、韓国・韓国人を理解しようとする皆さんの助けになるような情報を書いていきたいと思いますので、楽しみにしていて下さいね。
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