画像は取り戻せない
取り戻せない画像に後悔する |
「子どもが欲しがれば何も教えずに与えちゃう親もいるでしょうし、危険についてしっかり教え諭して危ない使い方をさせないようにする親もいると思う。だからこそ結果については親の責任だと思うのよ」
「子どもが勝手にやったことだと言えないってことだな。最初に与えたのは誰か、そういうリスクを伝えなかったのは誰かってことか」
「使い方や危険をちゃんと伝えずに道具を与えるのは、刃物を渡して後は好きにしなさいっていうことと同じじゃない?」
「なるほど。携帯電話もあくまでもツール、道具だからな」
麻季子が大きくうなずいた。話をしているせいか咽喉が渇くようで、いったんキッチンに行き、茶葉を替えてお茶をいれなおした。
「それにしても、写真は怖いと思うわ。ほら、ヤバイ写真が流出してアイドルが失墜することがあるでしょ」
「昔からあったよな。タバコを吸ってる写真とか、ニャンニャン写真とか。って古いか。ハハハ」
「付き合っているときは後先のことを考えないで写真を撮らせるのでしょうけど、絶対に裸の写真なんて撮らせちゃいけないわよね」
「いやぁ、その場の流れでヤッちゃうんだろ。今はまた、ケータイやらデジカメやらで気軽に写せるから」
「でも、そうして撮った写真を別れた後で、悪意を持ってネット上に流したり、近所や勤務先にばらまくといって脅迫したりして捕まる人もいるじゃない。そういう報道がされてるんだから、危険だって分からないかしらね」
「まあ、そういう目に遭う人はそういう報道には関心がないんだろうね。もしくは、知っていても自分は関係ないと思ってるんじゃないか」
「子どものことだけ言ってる場合じゃないわ。大人も危ないわよ。夏休みのその場限りの出会いとか。あ、それにほら、例のアジアの俳優さんで有名女優とかタレントとのHシーンの画像が流出してしまった事件があったじゃない」
「ああ、パソコンを修理に出したらデータを盗まれたって。それで引退したってヤツだろ。あれはヒドイ。それこそ世界中に流出したんだから。男はまだいいけど、相手の女性たちはかわいそう過ぎるな」
「恥ずかしい写真が永遠にネット上で世界中を巡るわけよね……」
「デジカメもケータイもパソコンも超便利だけど、それだけにリスクも大きい。紙の写真でもスキャンしたらデータとして残るからな。それでも、リスクよりも欲望と便利さが優先するんだろ。まあ、良識ある大人なら、最初から危険には近づかないんじゃないか」
「さあ。良識のある大人でもやってしまうからこそ、事件になるんじゃない」
「それだけ、そういう写真を撮りたがるのが人間なのかもな」
「そう考えると下手に写真なんて撮るものじゃないわよね。って、つまり他人に見られて困る写真ってことだけど。別れたけど写真を取り戻せないとかでけっこうヤバイと思ってる人も多いかも」
「やれやれ。紗希ちゃんのケータイから話がどんどんふくらんだな。まあ、マッキーとこうして話すことは楽しいよ。ワインを飲んでないのが残念だけど」
「ダメよ。紗希ちゃんが来ているのに」
肩を抱き寄せようとした春彦を押しのけるようにして、思わず後ろを見た麻季子だった。
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