逃げて助かった場所は
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少年は駅西側商店街を西に向かった |
新年最初の週末、両手に包丁を持った少年は、買い物客たちが逃げ惑う中を「戸越銀座」駅から一直線、「戸越銀座商栄会商店街」を大声で叫びながら西方向に進みました。「殺してやる」「なめるんじゃねえ」「おい、待て」「ばかにするんじゃねえ」「オレを侮辱するんじゃねえ」「ぎゃあ~、助けてくれよ」「オレは悪くない」
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左側が防犯監視カメラ映像を録画していた店 |
などといった言葉を発していたといいます。報道では、「商店街を疾走した」とか「約450mを駆け抜けた」と表現されていることが多かったのですが、実際には1kmの約半分近くを疾走することはどうでしょうか? 捕まった地点、中原街道まであとわずかというあたりで防犯監視カメラで記録された映像をテレビで見る限りでは、両手に刃物を持った少年は歩いていました。そろそろ疲れてきたころだったのでしょうか?途中、少年は車椅子に乗った高齢女性を見つけて、執拗に追いました。介護の男性二人が必死で、駅からちょうど120mほどにある別の薬局に車椅子を押して飛び込みました。商店街は、ほとんどの商店が店頭を間口一杯に開放して商品を並べています。ドアのある店もドアを開けていたりするなど、どこででも見られる商店街の風景です。その中で、この薬局は、いわゆるスライド式の両開きの自動ドアを使っていました。ドアの中ほどには、濃いグレー色のワイヤレスのタッチプレート(この部分を触るとセンサーが働きドアが開く)がついています。
自動ドアのスイッチを切る!
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タッチプレートには刃物の傷が残った |
薬局店内に入ると、追ってきた少年が包丁を振りかざして自動ドアをこじ開けようとしたため、介護の男性らは必死でドアを押さえていました。また、薬局内にいた女性従業員(29歳)が、とっさに自動ドアのスイッチを切り、少年を入れないようにしたのですが、少年は包丁でドアを何度も叩きつけてきたといいます。ドアのタッチプレートには包丁の刃跡が生々しく残されていました。女性は事件後に、「足ががくがく震えてきました。本当に恐ろしかったです」と言っていたとのことです。自動ドアのある薬局に飛び込んだ介護の男性二人もさることながら、即座に自動ドアのスイッチを切って、少年が入って来れないようにしたこの女性の機転には目を見張らせられます。スイッチを切ったとしても、こじ開けようと思えばできるものですが(終業後に自動ドアから外に出るような場合、スイッチを切って、手動でドアを開けている場合も多いはずです)、とにもかくにも「まずスイッチを切った」という点は、危機管理の点からも素晴らしいといえます。今後、今回の事件のような事態がどこかで発生したときに、その場の店舗などではこの点を記憶しているかいないかで、生死を分けるかもしれないというくらい重要なことだといえるでしょう。店主以下、従業員全員が、このような場合、まだ道路に襲撃者=通り魔がいる場合にはドアを閉めた状態で「自動ドアのスイッチを切る」ということを覚えておくべきです。
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自動ドアのスイッチはここ(↓)にあった |
この薬局店では、両開きのスライドドア2枚があり、その両側にはガラスの大きなはめ込みの窓がありました。自動ドアのスイッチはドアに対して右側の壁、普通の電灯のスイッチのような場所であり、形状でした。外の様子がよく見えて、なおかつすぐさま自動ドアの電源を切れる場所にスイッチプレートがあったことも幸いしたのでしょう。図には描いてありませんが、店内にはもちろん陳列棚などの家具が置かれていました。しかし、とっさに飛びついて簡単にスイッチを切ることができるように、手を伸ばしやすい位置だったといえます。店舗によって、スイッチの位置は異なるでしょうが、たいていはドアの付近の壁に埋め込まれているかと思います。自動ドアのある事業所、特に路面店などでは、従業員があらためて自動ドアのスイッチの位置を再確認しておくといいでしょう。もし、店頭が開放された店舗に逃げ込んだとしたら、いわば袋の鼠状態となってしまい、正気を失った刃物男に追い詰められて刃物で襲われてしまうかもしれません。中には、少年と目が合ったために、慌てて店の2階に逃げ込んだ女性店長(44歳)もいました。2階があったり、事務所などのドアの鍵をかけられる場所があったら、そこに逃げ込むのは被害を避けるために取れる手段の一つです。店舗や事務所などで、カーテンだけで仕切っていたり、パーテーションを設置しただけだったりすると、逃げ場がないおそれがありますので、鍵のかかる場所、襲撃を避けられる場所を確保しておくことも危機管理の一環でしょう。
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