防犯/防犯小説

女フリーランサー、身の守り方(3ページ目)

取引先の男性が自宅にまで訪ねてきてしまった…。どう切り抜けたらいいのか? 洋美は考えていなかった事態にパニックになっていた。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

電話一本、机一台

名刺の住所は自宅
名刺の住所は自宅
互いに手元のパソコンで色々と調べてみた。

「うわー、やっぱり都心だと高いね。ワンルームの部屋を借りるくらいの値段だ。あ、でも少し外れると安い。3~4万円でも借りられるんだね」
「うーん。まあ、場所はどこでもいいんだけど。っていうか、むしろ都心じゃないほうがいいかも。でも、数万円の出費かあ」
「まあねぇ、でもまともに事務所を借りたらもっと掛かるからね」
「でも、事務所の家賃を払えるほど収入がないから自宅でやっているということもあるし」
「いや、それくらいの家賃を払えるくらいにがんばろうって、前向きに考えないと」
「そうだねぇ」

「いずれにしても、名刺の住所が自宅ってのはマズイよね」
「そうね。自宅に思われないようにする手ってのはあるかな」
「何々事務所って書くとか? オフィス洋美とかさ」
「あー、○○ったら、私のこと洋美ちゃんって呼ぶんだよ。これもイヤなんだ」
「ちゃんと言えば? 名字で呼んでください、って」
「なんか角が立つのもイヤだしなぁ。でも、あんまり親しげにされるのってイヤだよね」
「いや、それは結局、洋美がその人のこと好きじゃないからだよ。だって、好きなタイプの人だったら気にならないでしょ?」
「まあね。それはそうだね。むしろ嬉しかったりするかも。勝手なものだよね。フフ」

「あとは、電話は携帯電話だけにすればいいし。ファクスはしょうがないとしても。電話はファクス専用ってことにしちゃえば。うちのはプリンターとスキャナーとコピーと一体型のファクスだから」
「そうか。それなら固定電話はないってことでも」
「でも事務所っていうなら、普通の電話もないとね。でも、これも転送にしてしまえば、留守でも携帯で受けられるし。もしくは、電話秘書サービスみたいなのがあるじゃない? レンタルオフィスにはオプションでそういうサービスがついているのもあるみたいだし」
「今でも転送にはして携帯で受けるようにしている。ただ打ち合わせ中とか困るから。留守中の電話を受け付けてくれるサービスがあるのね。それなら一人じゃないって言えるし。そうか。手は色々あるんだ。でも費用がかさむなあ。まあ、安全のための必要経費か」

「それか、どこかの事務所に所属するとかね。それがダメなら何人かで協力しあうとか。知り合いの男性ライターは、共同で事務所を借りて机一台、電話一本で仕事しているよ。で、家賃とか光熱費は割り勘でやってるって。一人で事務所借りるよりは安いよ。ただ信頼できる人とでなくちゃね。契約の問題とか、家賃のトラブルとか」
「そうね。そういう問題も出てくるね。でも、経費は掛かるけど、やり方は色々あるんだ」
「独立する前に考えておけばよかったね」
「でも、これまでは何も困ったことはなかったのよ」
「何が起きるか分からないのが人生でしょ?」
「そうだねぇ。とりあえず○○のことはどうしよう?」
「分かった。今度行くとき、私が一緒に行ってあげる。それで、私がさりげなくセクハラやパワハラのことを話題にするわよ。やり手の弁護士が知り合いにいるって」
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